突然、村中の人々や動物がその場で倒れ、息絶えた…。
1986年、カメルーンのニオス湖周辺で、約1,746人の住民と3,500頭以上の家畜が原因不明の死を遂げるという未曾有の大惨事が発生しました。
まるで「一瞬で命が吸い取られた」かのような光景に、地元では「呪い」や「毒ガス攻撃」といった噂が飛び交い、恐怖に包まれました。
しかし、科学者たちの調査によって、湖そのものが殺人者だったことが明らかになったのです。
一体、何が起こったのか?ニオス湖噴出災害の真相を紹介します。
ニオス湖噴出災害とは

1986年8月21日、カメルーン北西部のニオス湖周辺で、それまでに類を見ない大惨事が発生しました。
夜中の静寂を破るように「ドンッ!」という爆発音が響き渡り、その直後、湖の近くにいた住民たちが次々と倒れ、命を落としたのです。
奇妙なのは、被害にあった人々や動物の遺体に外傷がまったく見られなかったこと。
村の家屋もそのままの状態で、一見すると何も異変がないように見えます。
まるで時間が止まったかのように、人々が日常の動作のまま息絶えていたのです。
この異常な現象に、地元の人々は恐怖に陥りました。
「これは呪いだ…湖の神が怒ったのだ」 「毒ガス攻撃を受けたのではないか?」
しかし、その正体は、まさに湖そのものに隠されていたのです。
湖から発生した見えない死神の正体
調査の結果、ニオス湖で発生したのは「リムニック・エラプション(湖水爆発)」と呼ばれる現象でした。
この湖は火山性のクレーター湖であり、湖の底に大量の二酸化炭素(CO₂)が溶け込んでいたことが分かりました。
通常、CO₂は湖の底に安定して蓄積されていますが、ある日突然、それが一気に噴出したのです。
- 原因|地震、地滑り、湖水の温度変化などが引き金となり、CO₂が爆発的に放出された
- 被害|時速50kmの速度で流れ出したCO₂が、湖の周囲に「死のガス雲」を作り出し、低地に流れ込んだ
- 影響|空気より重いCO₂は、酸素を押しのけながら拡散し、周囲の人々を一瞬で窒息させた
二酸化炭素は無色無臭のため、気づいたときにはすでに手遅れ…多くの住民は眠ったままの状態で命を落としたといいます。
さらに、湖から最大25kmも離れた村々でも被害が発生し、数百人規模の死者が出たことが判明しました。
生存者の証言…「気づいたら村が死の街に」
わずかに生き残った人々の証言によると、異変が起きた瞬間の記憶はほとんどないといいます。
- 生存者A(農民)「深夜、何か重たい空気を感じた。でも、気づいたら家族全員が息をしていなかった」
- 生存者B(少女)「朝起きたら村中が静まり返っていた。まるで夢の中みたいだった」
- 生存者C(牧場主)「牛がみんな倒れていた。まるで時間が止まったような光景だった」
この異常な出来事が、科学的な現象で説明されるまでには時間がかかりました。
ニオス湖の悲劇を受け、専門家たちは二度と同様の事故が起きないようにするための対策を講じます。
現在では、湖底にパイプを設置し、溜まったCO₂を定期的に放出するシステムが導入され、CO₂が一気に噴出するリスクを抑えることができるようにしています。
また、カメルーン国内の他の火山湖(モヌウン湖など)でも同様の監視システムが整備されており、「静かな殺人者」とも言われるリムニック・エラプションの再発防止に努めています。
まとめ
ニオス湖の噴出災害は、湖底に溜まった二酸化炭素が一気に噴出し、周囲の住民や家畜を瞬時に窒息させた大惨事でした。
当初は呪いや毒ガス攻撃が疑われたが、科学者の調査により「リムニック・エラプション」と呼ばれる自然現象と判明、現在は湖底にパイプを設置し、定期的にCO₂を放出することで同様の事故を防いでいます。
この事件は、目に見えない脅威がいかに恐ろしいかを私たちに教えてくれますね。
あわせて読みたい|マタイク(mataiku)