もし今日から肉しか食べられなくなったら、体はどうなってしまうのか?
普段、当たり前のように食べている野菜やご飯を断ち、肉食動物のような完全肉食生活を始めたとしたら…。
今回は、短期的・長期的に起こり得る体の変化を、時系列でリアルに追いながら紹介します。
肉しか食べない生活で人間の体はどうなるのか?

肉だけの生活を始めると、体内に蓄えられていたグリコーゲン(糖の貯蔵エネルギー)が急速に減少、グリコーゲンは水分と結びついているため、これが消費されると体内の水分も一緒に抜け落ちます。
そのため、最初の数日間で体重がストンと2〜3kg落ちることも珍しくありません。
しかし、急激な水分損失によって電解質バランスが崩れ、だるさや筋肉のけいれんなど、いわゆる「ケトフル」と呼ばれる不調が起きることもあります。
これは、体がエネルギー源を糖から脂肪へと切り替えるために起こる自然なプロセスです。
そして、1週間が経つころには、体は脂肪をエネルギー源とする「ケトーシス状態」へ本格的に移行します。
ケトーシス状態とは、脂肪が分解されてできるケトン体が血液中に増え、これが新たなエネルギーとなるのです。
そして、盲点になるのがビタミンCの欠乏です。
肉にはこの栄養素がほとんど含まれておらず、野菜や果物を一切摂らないと、やがて「壊血病」という病気を引き起こす可能性があります。
壊血病とは、血管がもろくなり、歯ぐきや皮膚から出血が止まらなくなる恐ろしい病気で、かつては航海中の船乗りを次々と命の危機に追い込んだほど。
たった数ヶ月で発症するケースもあり、「全身から血が出る」なんてことも現実にあり得る話です。
さらに現代人が気をつけたいのが腸内環境の悪化。
肉ばかり食べていると、腸の中では善玉菌が減少し、悪玉菌が優勢になります。
その結果、便の色やにおいが異常になったり、体臭が強くなったり、肌が脂っぽくなったりと、見た目にも生活にも支障をきたすようになります。
実際に、40日間肉だけを食べ続けた日本の研究者が体験した例では、便がタール状に黒くなり、トイレに入るのも嫌になるほどの悪臭が発生したと言います。
腸内細菌を調べたところ、善玉菌の割合が明らかに減っており、肉食が腸内環境を変えてしまったことが分かりました。
そして見逃せないのが、大腸がんのリスクです。
肉類を多く食べると、胆汁酸という消化液が大腸に流れ込み、それが悪玉菌によって「発がん性物質」に変化します。
長期間続けば、がんのリスクは無視できないレベルになるでしょう。
肉食生活の長期的に想定される変化
もし人類全体が何世代にもわたって完全肉食生活を続けたら…体そのものにも根本的な変化が起こると考えられています。
まず、植物性食品の消化に必要な長い腸は、役割を失って短縮していくでしょう。
現在の人間の腸は雑食に適応して長めですが、ライオンのように肉中心で素早く消化する体に変わる可能性が高いです。
また、肉を噛み切るための犬歯がさらに発達し、逆にすり潰すための臼歯は退化していくかもしれません。
顎の力も強化され、硬い骨まで噛み砕けるような進化を遂げる可能性もあります。
さらに、植物から得ていたビタミン類を補う必要から、体内でビタミンCを合成する能力が進化して備わるかもしれません。
これは、肉食動物に見られる適応の一つです。
そして最も大きな変化は、代謝システムで、糖質に頼らず、脂肪を常に主なエネルギー源とする「脂質代謝型の体質」が当たり前になり、現代人とはまったく異なるエネルギー利用スタイルを持つ人類へと進化することが考えられます。
まとめ
完全肉食生活は、短期的には体重減少や血糖安定、頭のスッキリ感などのメリットが得られる一方、長期的には栄養素不足や健康リスクを抱える危険性もあります。
もしこれが世代を超えて続けば、人間の体は腸の短縮、歯の形態変化、脂質中心代謝への完全適応など、大きな進化を遂げる可能性も秘めています。
肉だけ食べる、そんな極端な選択肢にロマンを感じるのもいいですが、現代の私たちには、野菜も米も楽しめる豊かな食生活が用意されています。
バランスよく、多様な栄養を取り入れることこそ、健やかな人生への近道です。
あわせて読みたい|マタイク(mataiku)