紙を42回折ると月まで届く…理科や数学の雑学として耳にしたことはありませんか?
一見すると荒唐無稽に思えるこの話、実は計算上は本当なのです。
ただし、現実の物理的な限界や紙の性質を考慮すると、途方もない条件が必要になります。
ここでは、なぜこのような話が生まれたのか、どこまでが本当でどこからが夢物語なのかを紹介していきます。
指数関数で膨れ上がる厚み
紙を折ると厚みは倍々に増えていきます。
最初に0.09mmほどのコピー用紙を1回折ると0.18mm、2回で0.36mm、3回で0.72mm…。
この倍々の増加を数式で表すと「0.09mm × 2^n」、nは折った回数を意味します。
では、42回折るとどうなるか?
計算するとおよそ0.09mm × 2^42 ≈ 39万6,000km、なんと地球から月までの平均距離約38万kmを超えてしまうのです。
つまり、計算上は「紙を42回折れば月に届く」というのは正しいことになります。
指数関数的な増え方の恐ろしさと面白さを同時に感じさせる例といえるでしょう。
現実に立ちはだかる壁
理論上は月まで届くとしても、実際には紙を何十回も折ることは不可能に近いのです。
その理由は大きく3つあります。
■ 剛性の急増|曲げやすさは厚さの3乗に比例して固くなります。A4用紙を7回折ると厚さは約1.1cmになりますが、剛性はおよそ200万倍にも跳ね上がり、人の力では押しつぶすことすらできなくなります。
■ 紙片の大きさの縮小|1回折るごとに縦横が半分になるため、7回折ればA4用紙の縦横は数ミリしか残らず、指でつかむことすら難しくなります。
■ 摩擦と破れ|紙の繊維が耐えられず、きれいに折る前に破れてしまうのです。
これらが組み合わさり、家庭で挑戦できる限界はせいぜい6〜7回程度といわれています。
ただし、条件を変えれば少し話は違います。
アメリカの高校生ブリトニー・ギャリヴァンが考案した「長さの公式」によれば、紙を十分に長くすれば10回以上折ることも可能で、実際に彼女は長大なトイレットペーパーを使い、12回折ることに成功しました。
とはいえ、そのためには数キロ単位の紙と体育館レベルの広さが必要なので、やはり日常的な挑戦では夢物語といえるでしょう。
もし本当に折れたらどうなる?
もし奇跡的に42回まで折れたと仮定すると、厚みは月に届きますが、そのとき紙の面積はほぼ消えてしまいます。
1回折るごとに紙の縦横が半分になるため、42回後には原子レベル以下の小ささになり、もはや紙とは呼べない状態で、現実的に折りたたむというイメージとはかけ離れてしまいます。
それでは、もっと身近なスケールではどうでしょうか。
東京タワー(333m)に届くには約22回、東京スカイツリー(634m)なら23回折れば厚さが届きます。
さらに東京〜大阪間の距離(約400km)なら33回ほどで到達可能、こうした計算を通じて指数関数的な増加の威力を実感できます。
つまり、この話は「本当に紙を折れる」という現実性よりも、「指数関数の恐ろしさ」をわかりやすく示す寓話的な例え話なのです。
まとめ
紙を42回折ると月まで届くという話は、計算上は正しいものの、現実には紙の強度や物理的な限界から不可能です。
ただし、この話は指数関数のスピード感を直感的に理解させてくれる非常に面白い例であり、身近な東京タワーや大阪までの距離を例にするとさらに実感がわきます。
夢物語のような雑学ですが、そこには数学の奥深さと人間の想像力の広がりが詰まっているのです。
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