まるで空に浮かぶようにそびえる一本の岩、その頂に築かれた神秘的な礼拝堂、それが「カツヒの柱」です。
写真を見ただけでは信じられないような光景に、実際に人が住み、祈りを捧げていたという事実に驚きを隠せません。
アクセスは困難で謎も多いこの場所に、なぜ人々は惹かれるのか?今回は、世界一孤立した教会を紹介します。
カツヒの柱とは?

ジョージア(旧グルジア)のイメレティ地方、チアトゥラ近郊に位置する「カツヒの柱」は、高さ約40メートルの石灰岩の巨岩の上に築かれた修道施設です。
まるで大地から一本だけ突き出た塔のようなその姿は、ギリシャのメテオラを彷彿とさせますが、圧倒的な孤立感ではこちらが勝るかもしれません。
この岩柱の上には、小さな礼拝堂や埋葬室、修道士用の小部屋、ワイン貯蔵庫などがあり、9〜10世紀ごろに建てられたとされています。
しかし、15世紀には放棄され、長らく人の手が入らないままとなっていました。
再び注目を浴びたのは、1944年に登山家らの調査が始まってからです。
1995年には、修道士マキシム・カヴタラゼ氏がこの地に住み着き、週に2回のみ地上に降りるという厳しい生活を20年間続けました。
現在では修道士のみが登ることが許され、一般の立ち入りは制限されています。
登る手段は垂直のはしごのみ
この柱の上にたどり着く方法はただ一つ、垂直にかけられたはしごを使って登ること。
外観を見る限り、はしごの周囲は金属の柵で囲われており、滑落を防ぐ工夫はあるものの、頂上までに約20分はかかると言われています。
とはいえ、現在このはしごを使って登ることができるのは修道士のみ、かつては男性であれば特別に許可されることもありましたが、現在は宗教上の理由からも一般登頂は不可能となっています。
観光客はその神々しい姿を下から仰ぎ見ることしかできません。
しかしその姿は、まるで天空の城のようで、遠くからでも息を呑むような美しさがあります。
敷地内には地上に礼拝堂がいくつか整備されており、最近ではビジターセンターや土産物店も設置され、訪れる人を迎える準備が整いつつあります。
なぜそこに建てられたのか?
なぜ人里離れたこの巨岩の上に修道院が建てられたのか?
実はこの点については、未だにはっきりとした答えは出ておらず未解明のままです。
初期の研究では「禁欲主義の修道士たちが俗世間から離れるために築いた」と考えられていましたが、頂上にワイン貯蔵庫の痕跡があることから一部で疑問視されるようにもなりました。
しかし、キリスト教の儀式においてワインは重要な役割を持つため、禁欲主義と矛盾するわけではありません。
また、この岩自体がキリスト教以前の異教信仰の対象であった可能性もあり、宗教的な聖地が転用されたケースだという説も存在します。
加えて、技術的にも疑問があり、中世の時代にどうやって資材を岩の上まで運び、建造を行ったのか?はたまたクレーンのような道具があったのか?滑車を使ったのか?多くは謎に包まれています。
この謎があるからこそ、カツヒの柱は単なる観光地ではなく、人々の想像力と信仰心をかき立てる聖地として語り継がれているのでしょう。
まとめ
カツヒの柱は、写真で見る以上に現地での体験が心を揺さぶる、唯一無二の信仰遺産です。
アクセスの難しさ、建設の謎、宗教的背景、そして自然との一体感、それらすべてがこの柱を「世界で最も孤立した教会」として特別な存在にしています。
訪れるには勇気と体力が必要ですが、その分、得られる感動は計り知れません。
もし「この目で奇跡を見てみたい」と感じたなら、カツヒの柱はその願いに応えてくれるでしょう。
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