現代に生きる私たちは、世界中がマッピングされ、どこへでもアクセス可能だと思い込んでしまいがちです。
しかし実際には、今なお人類が容易に踏み込めない「未踏の地」が存在しています。
今回は、謎の多き2つの場所について紹介していきます。
テーブルマウンテン

テーブルマウンテンとは、南アメリカ大陸北東部・ベネズエラに広がるギアナ高地に点在する、テプイと呼ばれる山々の総称です。
テプイは先住民族ペモン族の言葉で「神々の住処」を意味し、実際にその存在感は圧倒的です。
標高1000〜3000メートル級の山々の頂上は平らで、垂直に切り立った崖によって完全に外界と遮断されています。
特に有名なロライマ山やアウヤン・テプイは観光・探検の対象となっており、後者は東京23区を超える面積の山頂を持ち、世界最大の落差を誇る滝「エンジェルフォール」がその断崖から流れ落ちています。
テーブルマウンテンの最大の特徴は、その孤立性が生んだ独自の生態系にあります。
山頂には約4000種の植物が生息し、その70%が固有種とされ、他では見られない生物も多数確認されています。
中でも「コイシガエル」は、オタマジャクシにならずに直接カエルになる進化的に特殊な種で、生きた化石と呼ばれる存在です。
ほかにも木登りに適した手のような後足を持つなど、極めてユニークな特徴を備えています。
さらに驚くべきは、山頂に存在する巨大な陥没穴です。
特にサリサリニャーマ山には、直径・深さともに350メートルを超える巨大な穴があり、地下の川が通っていた洞窟の天井が崩れたことで形成されたと考えられています。
この地形は、石灰岩に見られるカルスト地形に似ていることから「擬似カルスト」とも呼ばれています。
陥没穴の中は断崖に囲まれ、独自の微細な生態系が形成されている可能性が高く、近年ではドローン技術を駆使して一部の未踏エリアを撮影し、これまで知られていなかった地形や生態系の新発見が報告されています。
さこの高地には多くの神話や伝説が語られており、地元の文化にも深く根ざした存在で、一部の山々は「精霊が宿る場所」として地元住民から崇拝されており、その神秘性をさらに高めています。
まさにこの地は、隔絶された太古の世界がそのまま残されている「地球のロストワールド」といえるでしょう。
ポイント・ネモ

もうひとつの未踏の地が、南太平洋の中央に位置する「ポイント・ネモ」です。
これは「海洋到達不能極」とも呼ばれ、地球上で最も陸地から離れた場所にあります。
最も近い陸地まで約2700キロメートルあり、文字通り「誰もいない海」として知られています。
1992年、クロアチアの地理学者フラヴィオ・ブジティによってコンピューターシミュレーションを用いて特定されました。
名称は小説『海底二万里』に登場する潜水艦ノーチラス号の船長ネモから取られており、ラテン語で「誰もいない」という意味を持ちます。
この場所の孤立性は極端で、上空400kmを周回する国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士の方が、地上のどの人間よりもこの地点に近くなることがあるほどです。
この圧倒的な人のいなさを活かして、ポイント・ネモは今や宇宙開発の重要な拠点ともなっています。
役目を終えた人工衛星や宇宙船が地球に落下する際、燃え尽きずに残る部品があるため、それらが人の住む場所に落下しないよう、あらかじめ落下地点として調整されているのがこのポイント・ネモなのです。
これまでに旧ソ連の宇宙ステーション「ミール」、中国の「天宮1号」などがこの海域に落下しています。
そして今後、国際宇宙ステーション(ISS)も退役時にこの海域へと導かれる予定です。
その質量は420トン以上、サッカーコート1面分の大きさがあるため、落下には高度な技術が求められています。
しかしこの宇宙船の墓場という役割には、当然ながら懸念もあります。
すでに200〜300以上の宇宙機の破片がこの海域に沈んでいるとされ、海洋汚染の可能性が指摘されるようになっています。
生物の少ない海域とはいえ、「人がいない=捨ててよい」という考えは見直されつつあり、現在では再突入時に燃え尽きる素材の開発や、リサイクル可能な宇宙機の設計が進められているのです。
このように、ポイント・ネモは人類の進歩の象徴であると同時に、その影を落とす存在でもあるのです。
まとめ
テーブルマウンテンとポイント・ネモは、現代でも人類が踏み込みきれていない最後の未踏地です。
どちらも自然の圧倒的な力と、私たちの知識の限界を示しています。
テクノロジーが進んだ今だからこそ、こうした場所に敬意と関心を持つことが重要で、地球はまだすべてを私たちに明かしているわけではありません。
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