実はナイアガラの滝、ものすごい水量によって自らの岩盤を削りながら、少しずつ後退=移動し続けているのです。
今回は、ナイアガラの滝がなぜ動くのか、どのくらい動いたのか、そして今後どうなっていくのかを、地形の進化や人類の関わりも交えてわかりやすく解説します。
ナイアガラの滝は今も削られている

ナイアガラの滝といえば、カナダとアメリカの国境にまたがる世界的な観光名所です。
その規模は圧倒的で、1分間に約1億8,300万リットルもの水が轟音とともに流れ落ちます。
この尋常ではない水流が、何万年もかけて滝の足元の岩を削り続け、滝の位置を少しずつ上流側へと押し上げているのです。
この現象は後退侵食と呼ばれ、激しい水流が断層を侵食しながら崖を削っていくもの…つまりナイアガラの滝は「その場にとどまりながら、崖の後退によって自らの位置が変化していく」自然のプロセスの真っ最中にあるのです。
特に岩盤の中でも、上層に硬い石灰岩、下層に柔らかい頁岩(けつがん)があるという地層構造が、滝の後退を加速させてきました。
柔らかい部分から崩れていくことで上部が崩落し、滝全体が一歩後ろに下がるように動いていくというわけです。
滝の誕生と移動の記録
ナイアガラの滝が誕生したのは、今から約12,000年前の氷河期末期、氷が溶けて流れ出した大量の水が、ナイアガラ川を作り、そこに存在した断層を削ることで滝が生まれました。
このとき滝ができたのは、現在の位置よりも約11km下流の「クイーンストン」という場所です。
そこから現在の位置まで、長い年月をかけて上流へと後退し続けています。
特に自然のままに任せられていた時期には、年に約1mという驚異的なスピードで後退していたという記録もあります。
つまり、ナイアガラの滝は「固定された巨大構造物」ではなく、地球の営みによって変化し続けている動的な自然の存在なのです。
滝の動きが明らかになったのは19世紀からの地質調査と航空測量によってで、これにより過去の滝の位置や後退のスピードが明らかにされていきました。
現在は年3cmペースに減速中
現代では、ナイアガラの滝はそのままの姿を守るためにさまざまな人為的介入が行われています。
最大のものは水力発電のための水量調整、川の水の一部を導水路に流すことで滝にかかる水の勢いを抑え、結果的に滝の侵食スピードも抑制されているのです。
この水量調整のおかげで、現在の後退速度は年に約3〜5cm程度と、かつての100分の1以下にまで落ち着いています。
さらに、崩落防止のための岩盤補強工事も行われており、滝の姿を未来に残すための努力が続いています。
とはいえ、完全に滝の動きを止めることはできません。
数千年後には、ナイアガラの滝は今とは全く違う場所にあるかもしれません。
まとめ
ナイアガラの滝は、数千年にわたる大地のダイナミズムを今に伝える生きた地形そのものです。
強大な水流が岩を削り、断層をえぐり、崖を崩しながら、少しずつ滝の姿を変えてきました。
そして人類は、その滝を守ろうと技術と知恵を注ぎ、現在の美しさを維持しています。
地球という惑星の壮大な営みを感じながら、ナイアガラの滝という奇跡の瞬間に立ち会ってみてください。
未来の地図には、きっと今とは違う場所に「ナイアガラの滝」が記されているかもしれません。
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