温泉地や観光案内所でよく目にする「♨」マーク、誰もが温泉の記号だと知っていますが、その起源や意味までは意外と知られていないのではないでしょうか。
実はこのマークには、江戸時代から続く歴史や、ちょっとした豆知識が隠されています。
今回は、温泉マークの誕生秘話から湯気の本当の意味、さらには海外での誤解まで、思わず誰かに話したくなるトリビアを紹介します。
温泉マークの起源と歴史
温泉マーク「♨」は、現在では温泉地を示す代表的なシンボルとして定着しています。
しかし、最初から温泉専用のマークだったわけではありません。
その起源は江戸時代に遡ります。
群馬県の磯部温泉を紹介する書物に、湯気を象徴する記号として描かれていたのが最古の例とされており、このことから「温泉マーク発祥の地」として磯部温泉は観光PRに活用しています。
その後、1948年（昭和23年）に制定された「温泉法」において、このマークが温泉を示す記号として正式に取り入れられました。
法律によって全国的に普及し、道路標識や観光地図、看板などに広く使われるようになったのです。
もともと湯気を表すだけだった記号が、近代以降に温泉そのものを指すシンボルに変わったことは、日本文化のユニークな進化の一つといえるでしょう。
湯気の3本線に込められた意味とは？
温泉マークの最大の特徴は、中央から立ち上る3本の湯気です。
この湯気にはちょっとしたルールがあります。
正しい形は「中央が一番長く、左右に向かって短くなる」デザインで、これは温泉法の標識制定時に定められたものです。
湯気の自然な立ち上り方を表現したシンプルなルールにすぎませんが、案外知られていない事実です。
一方で、「3本の湯気はそれぞれ入浴に最適な時間を示している」という俗説もあります。
具体的には、中央が8分、左が5分、右が3分を表し、入浴は長くても8分程度が体に良いという意味だとする説です。
しかし、これは根拠のある説明ではなく、公式文献にも一切登場しません。
あくまで後世に生まれた、都市伝説のようなものと考えるべきでしょう。
実際には、現代の看板や地図に描かれる温泉マークは、必ずしも中央が長い形になっていません。
デザイナーのアレンジや簡略化で、三本の長さが揃っていたり、丸みが強調されていたりと、地域や施設ごとに微妙な違いが見られるのも面白い点です。
温泉マークにまつわる雑学いろいろ
温泉マークには、さらにユニークな雑学が隠されています。
まず、国際的な視点で見ると「♨」は必ずしも温泉として通じません。
外国人観光客の中には「湯気が立つ料理の記号」と誤解する人も多く、実際にラーメンやスープのマークに見えると話題になったこともあります。
そのため、近年の観光案内板では、♨とあわせて湯船に入っている人のイラストを併記するケースが増えています。
また、このマークは単なるイラストではなく、Unicodeに登録された正式な文字で、英語名は「Hot Springs」スマホやパソコンで「♨」と打ち込めるのは、文字コードに組み込まれているからです。
日本生まれの記号が世界規格に収録されているのは、ちょっとした誇りでもありますね。
さらに、温泉専用かと思いきや、銭湯やサウナでも使われています。
日本人にとっては「体を温める場所」の象徴であり、利用者の直感に訴える便利なアイコンなのです。
こうした柔軟な使われ方も、日本独自の記号文化の魅力といえるでしょう。
まとめ
温泉マーク「♨」は、江戸時代の磯部温泉で生まれ、昭和の温泉法制定で公式化された日本独自の文化記号です。
日常の中で見慣れた記号にも、意外な歴史や豆知識が隠されています。
温泉マークを見かけたときは、ぜひ湯気の長さやデザインの違いに注目してみてはいかがでしょうか。
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