ラーメン屋の閉店が止まらない…最近そんなニュースを耳にしたことはありませんか?
その一方で今まさに、まぜそば専門店が驚くべきスピードで増加しているのです。
なぜスープのないラーメン、いわばラーメンの亜種とも言えるまぜそばが、全国で支持を集めているのでしょうか…?
ラーメン業界の危機と増えるまぜそば専門店

2024年、ラーメン店の倒産件数が過去最多を記録しました。
背景には原材料費の高騰、光熱費の増加、人手不足、さらにインフレによる外食離れといった、飲食業界全体が直面する問題が横たわっています。
ラーメン業界も例外ではなく、1杯1000円を超える価格帯では客足が鈍る傾向が見られ始めているのです。
一方で、そんな逆風の中で着実に店舗数を増やしているのが「まぜそば(油そば)専門店」です。
たとえば、東京油組総本店は2023年からの2年間で27店舗も新規出店し、全国74店舗にまで成長しています。
え、ラーメンより地味じゃない?と思うかもしれませんが、実は地味だからこそ強い理由があるのです。
スープレス=最強のコスト削減モデル
ラーメン業界において最大のコストは、スープの仕込みにあります。
鶏ガラ、豚骨、魚介、野菜などの原材料に加え、数時間〜十数時間にわたる煮込みで、水道・ガス・電気の消費量は膨大します。
ところが、まぜそばにはそのスープがない…つまり、スープ代・光熱費・人件費の3点セットが大幅に削減されるのです。
たとえば、神奈川県のある店舗では、ラーメン屋から油そば店へ業態変更したことで月に約30万円ものコスト削減を実現しています。
さらに重要なのは、スープ廃棄の問題です。
ラーメン店では残ったスープは産業廃棄物として処理されることが多く、これにも莫大な費用がかかります。
まぜそばは、そもそも廃棄するスープがないため環境負荷も低く、飲食店経営者にとって実はメリットだらけなのです。
価格帯はラーメンと同じでも満足感は上回る?
スープがないのにラーメンと同じ価格って高くない?と思われがちですが、そこに罠はありません。
むしろ、まぜそばは大盛り無料・追い飯無料・味変自由などの要素によって、ラーメン以上の満足感を提供できているのです。
たとえば、東京油組総本店では、並盛(160g)・大盛(240g)・W盛(320g)がすべて同じ880円、この価格で、酢・ラー油・刻み玉ねぎ・ニンニク・柚子胡椒・粉チーズ・マヨネーズなど、多彩な調味料やトッピングで自分好みに味変できるのです。
こうした自由度の高さは、特に10代~20代の学生層に圧倒的に支持されており、「飽きずに楽しめる」「お腹いっぱいになるのにコスパ最高」との声がSNSでも多数見られます。
つまり、ラーメン価格の感覚で高利益を確保できるビジネスモデルが、まぜそばの最大の強みなのです。
また、スーパーやコンビニでも、まぜそば(油そば)の商品ラインナップは急拡大中で、例えば、明星食品からは「ぶぶか油そば」のカップ麺や、「チャルメラ油そば」の袋麺が登場、スーパーでは生麺タイプのまぜそばも販売されており、「家庭でまぜそば」がすでに当たり前の文化になりつつあります。
これは消費者側からの習慣化を促し、結果としてまぜそばへの抵抗感を下げ、専門店への集客にもつながるという好循環を生んでいます。
また、今やラーメン=スープありという常識が薄れ、汁なし系ラーメンの地位が確立されつつある点も、まぜそばの躍進に拍車をかけています。
まとめ
スープにこだわるラーメン店が苦戦を強いられるなか、まぜそば専門店は、低コスト・高利益・高満足度という最強の飲食業モデルとして急成長を遂げています。
スープ不要で経費を抑えつつ、自由なトッピングと満腹感で顧客の満足度を最大化できるこの業態は、今後ますます注目される存在になるでしょう。
飲食業界が逆風の中で生き残る術として、まぜそばはラーメンの次の形として定着しつつあるのです。
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