死海は「海」と名がついていますが実は湖、しかもその塩分濃度は海水の約10倍ともいわれ、人が力を入れなくても自然にぷかぷかと浮いてしまう、不思議すぎる場所です。
なぜそこまでしょっぱいのか? その秘密は、地形や気候、そして数百万年にわたる自然の営みに隠されています。
世界中から観光客を惹きつける死海の神秘的な魅力を、科学と歴史の視点からひも解いていきましょう。
死海は海ではなく出口のない湖
死海はイスラエルとヨルダンにまたがる塩湖で、海とつながっていない内陸湖です。
海抜は約マイナス430mと地球上で最も低い位置にあり、外に水を流し出す出口を持ちません。
ヨルダン川や地下水から淡水が流れ込む一方で、湖から外へと流れ出す道がないため、流入した水に含まれる塩分やミネラルが蓄積され続けます。
通常の湖は川を通じて余分な成分が流れ出ていきますが、死海は「閉じ込められた湖」、これが海よりもしょっぱくなる大きな理由なのです。
出口のない環境こそが、死海を死海たらしめる最初のポイントといえるでしょう。
太陽が水だけを奪い塩分を濃縮する
死海周辺は乾燥した砂漠気候で、降水量は極めて少なく年間を通して気温が高いのが特徴です。
この環境では湖に流れ込んだ水が蒸発しやすく、しかも外に流れ出ないため水分だけが空へと消えていきます。
残されたのは塩やミネラルです。
つまり、死海は「巨大な蒸発皿」のような存在で、太陽の強烈な日差しが湖水を蒸発させ、その度に塩分濃度は上昇し続けています。
普通の海水の塩分濃度が約3%に対し死海は30%以上、人が浮いてしまうほどの濃度は、この気候条件によって生み出されているのです。
地質がつくり出すミネラル豊富な湖
さらに死海周辺の地質も、その塩辛さを支えています。
湖の周囲には岩塩や石膏など、ミネラルを多く含む地層が広がっており、流れ込む川や地下水がそれらを溶かし込んで湖へ運びます。
ヨルダン川自体は淡水ですが、地層から取り込まれたミネラルが加わることで、死海はより塩分が濃くなります。
また、この豊富なミネラルは観光資源としても活用されています。
死海の泥は美容や健康に効果があるとされ、世界中から観光客が訪れる理由のひとつになっています。
つまり死海は、単に「しょっぱい湖」ではなく、地質と気候がつくり出した自然のスパリゾートでもあるのです。
まとめ
死海が海よりもしょっぱい理由は、出口のない湖であること、乾燥した気候による蒸発、そして周囲の地質から溶け出すミネラルの3点にあります。
これらの要素が重なり、塩分濃度は通常の海水の約10倍に達しました。
その結果、人が自然に浮かぶほどのユニークな湖となり、世界中から観光客が訪れる人気スポットとなっています。
死海は「しょっぱい湖」を超えて、地球の神秘を体感できる場所なのです。
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