カッコいい車に乗れば、素敵な女性が隣に座ってくれる、そんな幻想が本気で信じられていた80年代、テレビの前では車そのものよりも助手席の女優に釘付けになっていませんでしたか?
今回は、80年代に車のCMに登場した、3人の女優さんを厳選して紹介します。
多岐川裕美

- CM:トヨタ「ビスタ」
- 誕生日:1951年2月16日
1982年に登場した初代トヨタ「ビスタ」は、当時としては新鮮だった前輪駆動パッケージと、ノッチバック/ファストバックなど複数ボディを持つ機能派セダンでした。
そのイメージキャラクターとして起用されたのが、多岐川裕美さん、助手席に座るカットから始まり、後半ではひとりでハンドルを握って旅に出る、女性が自らドライブを楽しむ姿を描いた演出は、当時としてはかなり先進的だったと言われています。
多岐川さんは1970年代からドラマ・映画で活躍し、NHK大河『風と雲と虹と』『草燃える』『峠の群像』『山河燃ゆ』などで重要な役どころを務めた実力派女優として活躍しました。
- 「ビスタのCMで、山道を一人で走る多岐川さんの横顔が忘れられません。派手さはないのに、品のある色気がすごかった」
- 「七瀬ふたたびの印象が強い世代なので、あの超能力ヒロインが車を颯爽と運転している姿に未来の女性像を見た気がしました」
星野知子

- CM:三菱「エテルナΣ」
- 誕生日:1957年10月3日
三菱の中型セダン・エテルナΣのCMで印象的なのが、星野知子さんの「となりに乗せて!」という明るいひと言、「なっちゃんのエテルナ」というキャッチコピーは、NHK連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』の主演とリンクさせたもので、ドラマの人気と相まって大きな話題になりました。
星野さんは朝ドラ『なっちゃんの写真館』でブレイクし、その後もドラマ『サザエさん』や映画『失楽園』などで幅広い役柄を演じてきた女優・エッセイストです。
硬派な社会派作品からホームドラマまで、どこか芯の強さを感じさせる演技が印象的で、等身大の大人の女性を体現してきた存在ともいえます。
- 「エテルナのCMは、高嶺の花ではなく身近にいそうなお姉さん感が良かった。星野さんが隣に座ってくれそうな気がして、本気で三菱ディーラーに通っていました(笑)」
- 「『この空の花 長岡花火物語』など、年齢を重ねてからの星野さんも素敵。若い頃のエテルナCMを見ると、同じ人がずっと芯の強い女性であり続けているのが分かって胸が熱くなります」
浅丘ルリ子

- CM:スズキ「セルボ」
- 誕生日:1940年7月2日
2代目スズキ「セルボ」は、軽自動車ながらパーソナルクーペを思わせるスタイリングで、女性ドライバーをメインターゲットに据えた野心的なモデルでした。
そのCMで、真っ赤なドレス姿の浅丘ルリ子さんが「セルボには、いい男を乗せて走りたい」と微笑むシーンは、80年代の車CM史に残る名シーンとして語り継がれています。
浅丘さんは、日活黄金期を支えた看板女優として小林旭・石原裕次郎作品などに多数出演し、のちに『男はつらいよ』シリーズのマドンナ・リリー役でもおなじみ、映画『銀座の恋の物語』『博士の愛した数式』『デンデラ』など、時代をまたいで名作を飾り続けてきた昭和の大スターです。
- 「セルボのCMでの浅丘さんは、本当に妖艶という言葉がぴったり。軽自動車なのに、あの一言で一気に大人の香りがしたのを覚えています」
- 「『男はつらいよ』のリリーと同じ人だと知った時の衝撃。どの年代でも恋したくなる女性像を更新し続けているのがすごいです」
まとめ
車のCMは、単なるイメージガールではなく、それぞれの生き方やキャリアそのものが、車の世界観を立ち上げる重要なピースになっています。
今の車CMはCGも演出も格段に進化しましたが、だからこそ80年代の映像を見返しながら、「自分が本当に憧れていたのは、車そのものだったのか、それともその隣にいた女性像だったのか?」そんなことを、改めて考えてみるのも楽しいのではないでしょうか。
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