アフリカのニジェール共和国、乾燥と土地荒廃に苦しむこの国で、一見すると常識外れな方法で砂漠化に挑んできた日本人研究者がいます。
大山修一氏が、荒れ果てた土地へ撒いたのは、高価な肥料でも特殊な薬品でもありませんでした。
そんなことをして本当に大丈夫なのか?ところが数年後、かつて植物もほとんど生えなかった土地に、信じられない光景が広がることになります。
深刻な砂漠化…そこで見つけた村人の知恵
大山氏がニジェールで研究を始めたのは2000年、現地の村に入り、人々と生活をともにしながら調査するなかで、ある不思議な習慣に気づきました。
村人たちは夕方になると、屋敷から出たゴミを畑へ運んでいたのです。
なぜ、畑にゴミを撒くんだろう?実はこれこそが、後の大規模な緑化につながる重要な発見でした。
しかし、畑に少量の生活ゴミを撒くのと、トラックで都市のゴミを荒廃地へ運び込むのとでは話が違います。
目の前に運ばれてくる大量のゴミ、本当にこれで土地が良くなるのか?ただのゴミ捨て場にならないのか?村人たちがそんな不安を抱くのも無理はありません。
なぜ日本から来てゴミを撒くのか?土地が汚されるのではないか?と強く反発します。
村人からすれば、大切な土地がゴミ捨て場にされるように見えても不思議ではありません。
それでも大山氏は続けました。
荒廃地に家庭ゴミを投入した当初、そこには樹木が一本もありませんでしたが、雨季を迎えた頃、ゴミを撒いた土地から、トウジンビエ、モロコシ、カボチャ、ヒョウタンなどが次々と育ち始めたのです。
……生えている、あれほど疑っていた土地から植物が顔を出す、目の前でその変化を見た村人たちは驚きます。
一見、邪魔なものにしか見えなかったゴミが、植物が育つきっかけへと変わっていったのです。
5年後、そして7年後…砂の大地が激変
開始から5年ほど経つと、木々が大きく成長、その周辺には家畜が食べる草が育ち、人間が利用できる植物も姿を現しました。
そして2018年、7年目、かつて樹木一本なかった荒廃地には、木々が立ち並ぶ「パストラル・フォーレスト(牧畜森林)」と呼べる環境が形成されていました。
数年前までゴミが撒かれていた場所とは、にわかには信じられない光景です。
最初に見えていたのはゴミ、しかし、その下では種子が芽吹き、植物が育ち、家畜がやって来る、家畜は植物を食べ糞を落とす、その糞がまた土地へ還っていく、ゴミ→植物→家畜→土壌、止まっていた自然の循環が、再び動き始めたのです。
あの日本人は何をしている?から始まった挑戦は、大山氏自身、村人たちと一緒にゴミを収集し、荒廃地へ撒いて緑化に取り組んでいると語っています。
つまりこれは、日本人研究者がアフリカへ行き「日本の技術で砂漠を救った」という話ではなく、むしろ逆です。
日本人研究者が現地の人々の知恵に驚き、その知恵を科学的に検証し、村人たちと一緒に発展させていった物語なのです。
荒廃地が再生すれば農作物が育ち、家畜の放牧地も増える、農地や放牧地をめぐって起きる農耕民と牧畜民の対立を減らし、食料不足や貧困、さらには紛争の予防へつなげることも、大山氏が目指している大きなテーマなのです。
私たちが不要だと思って捨てているものにも、場所と使い方を変えれば、別の価値が眠っているのかもしれません。
砂漠の片隅から始まったこの挑戦、荒れ果てた大地を変えたのは、最先端の巨大設備ではなく、村人たちの知恵と、それを見逃さなかった一人の研究者でした。
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