世界中の観光客を魅了し続けるローマの名所「トレビの泉」、背中越しにコインを投げれば願いが叶う、そんなロマンチックな習慣は広く知られていますが、その裏では驚くほど大きな社会的役割が動いています。
泉に沈む無数のコインはどこへ行くのか、どんな意味が込められているのか、そしてローマ市がどのように管理しているのか、観光では見えないトレビの本当の姿を紹介します。
コインに込められた願い意味と伝説
トレビの泉にコインを投げる伝統は古く、現在でも観光客が必ず体験する名物として親しまれています。
コインには枚数ごとに意味があるとされ、1枚目は「またローマを訪れることができる」という願いを象徴しており、最も広く知られる意味で、旅の思い出として投げる人も非常に多いです。
2枚目は「恋愛が成就する」、または「永遠の愛が続く」という願いを込めて投げられます。
恋人同士や夫婦の来訪者が並んで背中越しにコインを投げる姿は、ローマらしいロマンが漂う光景です。
3枚目については「新しい人生を切り開く」という意味が現地で語られており、恋愛や人生の節目に訪れた人が願いを託すケースもあります。
こうして1日中絶え間なく投げ込まれるコインの総量は膨大で、観光客の多い季節には泉の底が見えなくなるほど硬貨で埋め尽くされることもあるほどです。
泉に沈むコインは年間150万ユーロ以上が支援
多くの人が気になるのは、泉に集まるコインの行方…トレビの泉では、ローマ市が定期的に清掃を行い泉の底に沈んだ硬貨をすべて回収します。
清掃は週に数回行われており、硬貨が溜まりすぎて景観や水流を損なわないよう随時メンテナンスが施されています。
回収されたコインの総額は、年間で約150万ユーロ(日本円で2億5,000万円以上)、この莫大な金額はそのままローマ市内の慈善活動に充てられます。
具体的には、カトリック系慈善団体「カリタス」を通じて、生活困窮者支援、食料配布、ホームレス支援などの社会福祉に活用、また投げ込まれるのは硬貨だけではなく、指輪や鍵、紙片などの願掛けアイテムが沈むこともあります。
中にはクレジットカードを投げ込む観光客もいますが、ICチップは水で壊れるため使用不能になるケースがほとんどです。
これらのアイテムも清掃時にまとめて回収され、市の管理下で処理されます。
文化財を守るためのルール
トレビの泉は世界的に貴重なバロック建築であり、文化財として厳重に保護されています。
そのため泉の中に入ることは禁止されており、違反すると400〜500ユーロ(約6〜8万円)の罰金が科されます。
写真撮影のために誤って足を入れてしまい、罰金を支払う観光客も後を絶ちません。
泉の周囲には監視カメラも設置されており、硬貨を拾おうとする者や泉に侵入しようとする行為を防ぐための体制も整えられています。
こうした厳格なルールがあることで、トレビの泉は常に美しさを保ち世界中の観光客に安全に利用されているのです。
まとめ
トレビの泉で、投げ込まれたコインは願いの象徴であると同時に、困窮者支援へとつながる大切な資金源でもあります。
清掃やルールの徹底によって泉の美しさが守られ、その姿は昼夜を問わず訪れる人々を魅了し続けています。
ローマを訪れる際には、この仕組みを知ったうえでコインを投げると、より深くこの場所を味わえるでしょう。
あわせて読みたい|マタイク(mataiku)