一時期、フリマアプリ「メルカリ」で現金が額面以上の価格で売買されていたことをご存じでしょうか?
5万円札が約6万円で取引されるという異常な光景は、単なる規約違反や悪ふざけではなく、日本社会が抱える金融構造の歪みを象徴する出来事でした。
なぜ現金が商品になったのか?メルカリ現金出品問題を入り口に、日本の金融制度が生んだ究極の貧困ビジネスの実態とは…。
メルカリで現金が額面以上で売られたのか?
メルカリで現金が高値で売られていた理由は、クレジットカード現金化の抜け道として利用されていたからです。
本来、クレジットカードで現金を直接購入することはできませんが、メルカリ上で現金が商品として出品されれば、カード決済が可能になります。
購入者はカードで支払い、現金を即手に入れることができ、支払いは翌月以降に回せる、これは事実上「カードで現金を買う」行為であり、金利や手数料に相当する上乗せ分として、現金は額面以上の価格で取引されていたのです。
この構図は、単なる裏技ではなく違法な現金化やマネーロンダリングに悪用されるリスクも孕んでおり、メルカリは現金および電子マネー、換金性の高い商品の出品を明確に禁止するに至ります。
しかし問題は、なぜこのような取引が生まれ広がったのか?そこには根深い社会背景が存在していました。
貸金業法改正が生んだ借りられない時代
この問題点は、2006年に行われた貸金業法改正にあります。
かつての消費者金融は、グレーゾーン金利の存在や審査の緩さから、誰でも比較的簡単に借り入れができましたが、過払い金問題をきっかけに法改正が進み、金利は年20%以下さらに年収の3分の1を超える貸付は禁止される総量規制が導入されます。
その結果、多くの消費者金融業者は淘汰され、武富士の倒産をはじめ業界は急激に縮小、一見すると多重債務者を減らす健全化に見える流れですが、同時に無担保で即急にお金を借りられる場所が消えていったのもまた現実でした。
そこで、消費者金融の役割を担ったのが、銀行カードローンです。
銀行カードローンは総量規制の対象外であり、消費者金融から弾かれた人たちの受け皿となりますが、これが新たな問題を生みます。
複数の借金をまとめる「おまとめローン」などを利用しながら、年収の2倍、3倍に達する借金を抱えるケースも出現し、最終的に破産に追い込まれる人が急増したのです。
つまり、規制によって「借りすぎ」は抑えられたかに見えながら、実際には借りられない人が増え、しかも行き場を失っていったという現実がありました。
究極の貧困ビジネス
過払い金返還も縮小する中で最後にたどり着いたのが、クレジットカード現金化であり、その舞台として機能してしまったのがメルカリだったのです。
現金出品は、制度の外に追い出された人たちが、制度の外で生き延びるための最後の選択肢でもあり、この現象を「究極の貧困ビジネス」と呼んでいます。
そこには、保証もなく救済もなく、使う側が一方的に不利な構造がありながら、それでも使わざるを得ない切迫した状況が存在していたのです。
メルカリはその後、現金や換金性の高い商品の出品を禁止し規制を強化しましたが、規制すれば問題が消えるわけではありません。
これは単なるフリマアプリの問題ではなく、日本社会における「小口無担保金融」のあり方そのものを問い直す問題でもあるでしょう。
まとめ
メルカリで現金が額面以上で売られていた現象は、単なる奇妙な出来事ではなく、貸金業法改正、銀行カードローンの拡大、そして借りられなくなった人たちの存在が生み出した必然的な結果でした。
消費者金融を規制すれば多重債務がなくなる、という単純な話ではなく、お金を必要とする人は形を変えて必ず現れます。
現金出品という究極の貧困ビジネスは、私たちが見ないふりをしてきた社会の底を、あまりにも露骨に映し出した出来事だったと言えるでしょう。
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