皆さんは「場面緘黙(かんもく)症」という症状についてご存じですか?
特定の場所や場面で声がでなくなる、原因不明の症状です。
専門医もほぼおらず、治療法も確立されていません。
幼少期から発症する子も多く、小学校入学時に必ずといってよいほど親が悩むのが、「普通学級にするのか、支援学級にするのか」という問題です。
今回は、場面緘黙(かんもく)症のわが子について、親としてどのように選択し対応していけばよいのかをお伝えします。
場面緘黙(かんもく)症とは
場面緘黙(かんもく)症は、特定の場面や場所で発症します。
場面緘黙(かんもく)症の子どもの多くは、家の中では話せますが、学校や公園など特定の状況や場所で、本人の意思とは関係なく声が出せなくなります。
数秒前まで笑顔で話していたのに、特定の場所や場面になると一瞬にして声のシャッターが降りてしまい、声が出なくなるのです。
声のシャッターは、自分の意思で開閉できません。
生まれつき「不安になりやすい」「緊張しやすい」性質を持っているとも言われていますが、根本的な原因は未だ解明していません。
場面緘黙(かんもく)症の発症時期は?
場面緘黙(かんもく)症は、2〜8歳に発症することが多いとされていますが、大人になってから発症する場合もあります。
ただ、子どもの頃から兆候はあったものの、場面緘黙(かんもく)症を知らず、大人になって初めて自分の状態に気づくこともあるようです。
子どもの頃に適切な支援を受けられず、大人になっても症状が続いたり話せないことで、「うつ」などの二次障害を引き起こすこともあります。
カウンセリングを受けても、未だに親の過保護によるものだと、誤った情報を平気で口にするカウンセラーもいます。
場面緘黙(かんもく)症を専門的に診られる医師もほとんどいないため、周りからの理解がなかなか得られず、親子で苦しんでいるケースが少なくありません。
誤解から心を傷つけられてしまうことも
場面緘黙(かんもく)症は、学校の先生でも知らないことが多いのが現状です。
そのため、クラスメートや先生から、次のように言われてしまうことも。
- 「無視するな!」「挨拶もできないのか!」「返事ぐらいしなさい!」
- 「お口なくしちゃったの?」「話せないの?」
本人も、なぜ声が出せなくなるのかわからず苦しんでいる中で、追い打ちをかけるような周りの言葉にさらに苦しめられているのです。
声を出すことを強要したり、ましてや声を出せないことで責めたてたりすれば、ますます症状が悪化し、二次障害を引き起こします。
場面緘黙(かんもく)症を持つ子には、声が出せない状態でも安心して居られるような周りのサポートが必要不可欠です。
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小学校は普通学級?それとも支援学級?
場面緘黙(かんもく)症の子どもが小学校に入学するにあたって、ほとんどの親が声が出せないわが子を普通学級にするか、支援学級にするかで悩むことになります。
場面緘黙(かんもく)症があるからといっても、一概に支援学級が良いとはいえません。
なぜなら、場面緘黙(かんもく)症は人により、度合いが全く違うからです。
そのばらつきのために、場面緘黙(かんもく)症の子が話している場面では、「わざと話していない」と誤解されてしまうことも少なくありません。
そして、話せないことで責められた結果、唯一声を出せていた場面ですら声が出なくなったりするのがつらい点です。
それぞれの症状に合わせて選ぶことが大切
ひとくちに場面緘黙(かんもく)症といっても、様々なパターンがあります。
- 授業中の発言はできるが、雑談だけができない
- 授業中の発言はできないが、仲良しの友達とだけは話せる
- 発言するとき、声が聞き取れないほど小さくなってしまう
同じ場面緘黙(かんもく)の症状をもっていても、声がでなくなる特定の場面は人それぞれ。
例えば、ただ声が出せないだけではなく、表情も動かせず、椅子から動くことすらできない「緘動(かんどう)」という症状を伴う場合があります。
鉛筆を持ってノートに書くことも、給食を食べることも、トイレに行くこともできないとなれば、支援学級でなければ難しい状態です。
一方で、場面緘黙(かんもく)症を克服するには、スモールステップで成功体験をさせていく方法が良いとされています。
少しずつ経験を積んでいくことが必要なのです。
そのため、声を出せないこと以外で特に困りごとがない場合は、通常学級で同年代の子達と一緒に過ごす方が、たくさんの経験を積みやすく、良い刺激になるでしょう。
普通学級の場合は周りの理解とサポートが不可欠
ただし、普通学級を選択する場合は、声が出せなくても何らかの意思表示ができるような周りの理解とサポートが必要になります。
理解とサポートが無い状態での普通学級は、追い詰められて二次障害を引き起こすリスクが高くなるからです。
少なくとも入学する数か月前には学校と連絡をとりあい、子どもの状態を伝え、学校の対応の仕方について聞いてみましょう。
小学校に入学すると、保育園や幼稚園とはガラッと雰囲気が変わります。
場面緘黙(かんもく)を発症する子は人より不安になりやすいため、入学したては特に周囲の協力が欠かせません。
そもそも学校という場所に慣れる必要があり、先生に対する不安を取り除くために、最初は誰もいない教室で先生と二人で触れあう時間が必要なこともあります。
ただ、感覚過敏でザワザワした音に耐えられないなど、声を出せないこと以外で教室での困りごとがあるなら、支援学級の方が配慮してもらいやすいでしょう。
「通級指導教室」という選択肢も
また、小学校によっては「通級指導教室」があります。
在籍は普通学級ですが、週に何時間か教室や学校を移動して、困りごとに応じて個別に指導してもらえるのが大きな特徴です。
いきなり支援学級には抵抗がある場合や、普通学級だけでは不安がある場合、まずは通級指導教室の利用から始めて様子をみてみるのも一つの方法です。
通級指導教室が行われているかどうかは、通学される学校に直接ご確認ください。
なお、サポートが受けられる前提で普通学級に通いはじめても、実際は周りからの理解を受けられずに、つらい場所となっていることもあります。
そのような場合は、無理して普通学級に通わせ続けるのではなく、支援学級への移動を視野に入れて、早急に話し合いましょう。
学校が、子どもが声を出せなくても安心して過ごせる場所であることが、何より大切です。
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場面緘黙(かんもく)症のわが子に親ができること
病院にいっても効果のある治療をしてもらえるわけではなく、具体的にどうしたら良いのか教えてもらえない。
先の見えない不安に押しつぶされそうになりながら、声が出なくなる子どもの現状を何とかしたいと願うばかり。
場面緘黙(かんもく)症を持つ子の親は、手探りで情報をかき集めながら、対応していることがほとんどです。
ただ、場面緘黙(かんもく)症を克服した方もたくさんいらっしゃいます。
克服のきっかけはまちまちですが、克服できた実績がある点は、希望です。
同じ悩みを抱えた仲間と情報交換や気持ちを共有しよう
最近では、場面緘黙(かんもく)症を持つ親や本人が、SNSによって情報発信しているため、同じような悩みを抱えた方との情報交換や、気持ちを共有することが可能です。
また、場面緘黙(かんもく)症についての情報や相談を受け付けてくれる場所があります。
▼場面緘黙(かんもく)症専門の非営利の任意団体【かんもくネット】
場面緘黙(かんもく)症を持つ本人、保護者、教師、臨床心理士など、克服した方も含めて参加されています。
▼「高木潤野教授」フェイスブック【高木潤野研究室(信州かんもく相談室)】
長野大学社会福祉学部の高木潤野教授は、場面緘黙(かんもく)症の研究の第一人者です。
相談室は現在、新規受付を中止していますが、高木教授ご本人がフェイスブックで情報を更新されています。
世の中には思いのほか、場面緘黙症で悩んでいる方、同じように克服しようと頑張っている方がたくさんいらっしゃいます。
親としてできることは、希望を捨てず、年数をかけて子どもと一緒に場面緘黙(かんもく)症を乗り越える覚悟をすることです。
担任の先生に資料を渡したり、密に連絡をとりながら理解を深めてもらうことが、とても大切。
機会があれば、学校で場面緘黙(かんもく)症の絵本を読み聞かせることも有効です。
小さな子どもでも理解しやすい、おすすめの本を1冊ご紹介します。
▼「なっちゃんの声 学校で話せない子どもたちの理解のために」
VIA:Amazon(なっちゃんの声)
- 文・絵:はやし みこ
- 監修:かんもくネット
- 出版:学苑社
また、親も人間です。
思わず、強い言葉で子どもにあたってしまったとしても、ご自分を責めすぎないようにしましょう。
日々のあなたの想いと行動は、ちゃんと子どもに伝わっているのですから。
まとめ
日本では場面緘黙(かんもく)症の認知度が特に低いため、学校で理解や支援を受けることが難しいこともあります。
しかし親が動かなければ何の支援も受けられず、誤解され発言を強要されて、症状を悪化させてしまう可能性があるのです。
今も、場面緘黙(かんもく)症に対する研究はされています。
適切な支援やサポートを受ければ、克服できる可能性は十分にあります。
手探り状態の中でも、まずは誤解を招かないように最低限、次の2つをしっかりと周りに認識してもらいましょう。
- 話さないのではなく、話せなくなる
- 無視しているのではなく、声が出せなくなる
そのうえで、次の2つをお願いしましょう。
- 発言を強要しない
- 筆談などの非言語的コミュニケーションでの対応
場面緘黙(かんもく)症について一人でも多くの方に知ってもらい、自然にサポートを受けられる日がくることを、心より願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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