科学と技術の進歩により、かつては解明不可能と思われていた多くの世界遺産の謎が解かれています。
今回は、ピサの斜塔、マチュピチュの2つについて、その驚きの真実をお伝えします。
解明された世界の建造物
マチュピチュ
世界遺産マチュピチュ、その高地に広がる遺跡の風景は人々を魅了しますが、なぜそんなにも険しい場所にこの町が造られたのでしょうか。
航空写真の分析と現地調査の結果、マチュピチュの位置は二つの断層が交差する地点であり、建物自体も断層に沿って配置されていることが判明しました。
つまり、マチュピチュの人々は地殻変動で砕けた花崗岩を利用し、独特の地理的条件を自らの利益に活用したのです。
さらに、この花崗岩を掘り起こした溝は、年間雨量2000ミリメートルの厳しい自然環境下で地下水の排水路として機能し、落石や地滑りを防いでいました。
このようにマチュピチュの人々は自然を味方につけ、その生活を支えるための町を築いていたのです。
他にも同じような地質条件を利用した遺跡が存在し、インカ帝国の首都クスコやオリャンタイタンボ、ピサックなども大断層上に建てられていました。
マチュピチュの創造性と適応力は、自然と共存しながら生きる知恵の証といえるでしょう。
ピサの斜塔
ピサの斜塔、その美しい傾きは世界中の観光客を魅了し続けています。
1173年に建設が始まり、3つの工期を経て完成したこの塔は、何度も大地震に見舞われながらもなぜ倒れないのでしょうか。
驚くべきことに、その理由は塔を支える地盤の特性と塔自体の高さ・剛性の組み合わせにあります。
ローマ第三大学のCamillo Nuti教授率いる研究チームによれば、この組み合わせが塔を地震動と共振することを防ぎ、倒壊から免れさせていたのです。
地盤の柔らかさが塔を傾け、倒壊寸前にまで追い込んだのと同じ地盤が、逆に塔を地震から守る一方で、その塔の高さと剛性が塔の安定性を保っていたのです。
これらの相互作用を地盤と構造物の相互作用(DSSI:Dynamic Soil-Structure Interaction)と呼び、ピサの斜塔のそれは「ワールドレコード」級だと評されています。
つまり、ピサの斜塔が倒れない秘密は、地盤と建造物の絶妙なバランスによるもの。
研究に参加した英ブリストル大学のGeorge Mylonakis教授の言葉を借りれば、「皮肉なことに、塔を傾けさせ、倒壊寸前にまでもっていったのと同じ地盤が、塔を地震から守ることに役立っている」ということなのです。
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