生理前になると理由もなくイライラしたり、普段なら腹が立たないことにも腹が立ったりする症状に悩まされている女性は少なくありません。
なかには、家族や友人など周囲の人に八つ当たりをしてしまい、自分では感情がコントロールできず途方にくれるケースもあります。
今回は、生理前のイライラする症状について、薬剤師の碇純子さんに解説していただきます。
生理前のイライラが止まらず、つい夫や子どもに八つ当たり……
35歳のハルさんは、生理前のイライラで夫や子どもに当たってしまい悩む1児の母。
性格は穏やかで腹が立つこともあまりないのですが、どうしても生理前だけはイライラしやすくなってしまうのだそうです。
イライラする理由は些細なものから理由のないものまであり、ときには別人のように人が変わって子どもや夫、姑に当たってしまったこともありました。
当たったあとは自己嫌悪に襲われるものの、自分では止められないことから婦人科へ行ってみることに。
診察結果は「PMS(月経前症候群)」でした。
治療がスタートし、婦人科から処方されたホルモンバランスや自律神経を整える漢方薬を服用しながら「ストレスをためないように」というアドバイスを実践していくことになりました。
最初は理解できない様子の夫でしたが、PMSに関する資料や薬などを見せて納得してもらい、一緒に治療を頑張っていくことに。
ストレスがたまるとイライラの症状が強まりますが、家族の理解を得て治療を受けたり、無理をしないスタイルで過ごすことを心がけたりすると、徐々に症状が改善されていきました。
現在も完治とまではいかないため、症状に悩まされるときは婦人科で診てもらい、漢方薬を飲みながら家族みんなでPMSを乗り越えているそうです。
イライラの原因はホルモンバランスの変動?
生理前のイライラはPMS(月経前症候群)またはPMDD(月経前不機嫌症候群)である可能性があります。
PMSは、イライラだけでなく、腹痛や腰痛、抑うつ、頭痛、肩こり、冷え性などさまざまな心身症状をもたらすのが特徴です。
一方、PMDDは腹痛や腰痛、抑うつ、頭痛、肩こりなどに加えて、イライラや憂うつ、情緒不安定の症状が強く、完全に自分をコントロールできなくなって仕事や育児などが手につかなくなることもあります。
PMSやPMDDの要因はまだはっきりとわかっていませんが、ホルモンバランスの急激な変動や生活習慣が影響していると考えられています。
とくに、30代や出産後の女性は心の症状が強く出やすい傾向にあり、多くの方が症状に悩んでいるといわれています。
生理前のイライラを鎮める3つの対策
生理前のイライラを抑えるための対策を3つご紹介いたします。
1.軽い有酸素運動
軽い有酸素運動は、PMSやPMDDの緩和に効果的だといわれています。
運動中は交感神経が優位になり、運動後は副交感神経が優位になるため、運動には自律神経を整える効果が期待できます。
しかし、育児や仕事に追われていてまとまった運動時間を取れなかったり、運動が苦手だったりすると、運動に時間を割くのはかえってストレスになることも。
そのような方は「運動しよう」とは思わず、「合間にストレッチをしよう」「散歩してみよう」といった感じで構いません。
ストレスはPMSやPMDDの緩和を阻害してしまうため、無理のない範囲で行っていくことが大切です。
2.食事の見直し
欠食することが多い方は、まず1日3食を決まった時間に摂るようにしましょう。
食事のリズムを整えることで体内時計が規則正しくなり、自律神経が乱れにくくなります。
女性におすすめしたい栄養素は以下の通りです。
- イソフラボン:女性ホルモンに似た作用
- マグネシウム:情緒不安定・むくみの解消
- カルシウム:情緒不安定・むくみの解消
- ビタミンB群:イライラ・頭痛・倦怠感の解消
- ビタミンC:ストレス抵抗力を高める・貧血の改善
- ビタミンE:血流促進・抗酸化作用
- 食物繊維:便秘の解消・心身の調子を整える
- αリノレン酸:ホルモンの働きを促す
反対に摂りすぎに気をつけなければならないのは、以下のようなものです。
- アルコール
- カフェイン
- 塩分
- 糖分 など
上記は、交感神経を刺激してイライラを助長させる要因のひとつです。
また、塩分の摂りすぎはむくみやすくなる点でも注意が必要です。
3.考え方や行動へのアプローチ
自分の時間を持つ、無理をしない、パートナーに理解を求めるなど、考え方や行動面を変える努力をしましょう。
ストレスを感じると、よりホルモンバランスが乱れるため症状の悪化にもつながります。
「つらいな」と感じたら自分の心とからだを労わることを重視し、周囲の人の協力を得ながら過ごすようにしましょう。
生理前のイライラには漢方薬も役立ちます
生理前のイライラには、漢方薬の活用もおすすめです。
漢方薬は、生理前のイライラの原因となる自律神経や血流、ホルモンバランスの乱れを整え、症状の根本改善を目指します。
また、一般的に副作用も少ないため試しやすいのもメリットです。
生理前のイライラ対策には「ホルモンバランスの乱れを整える」「自律神経を整える」「血流をよくして自律神経の乱れを改善する」などの生薬を含む漢方薬が用いられます。
漢方薬で心とからだのバランスを整えることで、イライラだけでなく生理痛の緩和も期待できます。
<PMS・PMDDにおすすめの漢方薬>
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
体力が中程度以下で、疲れやすく肩がこる方におすすめです。
イライラ、気分の落ち込みなど、女性ホルモンの変動によって起こりやすい精神不安の症状やのぼせ、めまいにも有効です。
上記の漢方薬はPMSやPMDDに効果的ですが、体質によっては別の漢方薬が用いられることもあるため、医師や薬剤師に相談することが大切です。
体質に合わないと副作用のリスクが高まったり、効果があらわれなかったりするためです。
より気軽に体質の診断をしたい方は「あんしん漢方」などのオンラインサービスもおすすめです。WEB上で体質を診断し、薬剤師がAIを駆使して漢方薬を提案して自宅に届けてくれます。
まとめ
生理前のイライラを自分でコントロールするのは難しいため、婦人科で診てもらい、治療したり家族に理解を求めたりすることが大切です。
1人で抱え込まず、プロに頼りながら改善を目指していきましょう。
公式|あんしん漢方
<この記事を書いた人>
あんしん漢方(オンラインAI漢方)薬剤師|碇 純子(いかり すみこ)
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)
神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。
世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
YouTube|Medical Health CH
あわせて読みたい|マタイク(mataiku)