私たちの生活に欠かせないサービスを次々と取り込んできた通信各社が、いま力を入れているのが「銀行」で、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天はそれぞれ異なる方法で金融サービスとの一体化を進めています。
しかし、厳しい規制があり運営にも大きな責任を伴う銀行を、なぜそこまでして欲しがるのでしょうか。
携帯会社が本当に欲しいのはメイン口座
通信各社の戦略はそれぞれ異なります。
KDDIはauじぶん銀行をグループに持ち、通信サービスと住宅ローンなどを連携、楽天は楽天市場を起点に、楽天カード、楽天銀行、楽天証券、楽天モバイルへとサービスを拡大してきました。
ソフトバンク陣営はPayPayという巨大な決済サービスを入口として、PayPay銀行やPayPay証券へつなげており、ドコモは銀行を取り込み、dカードやd払い、マネックス証券などを含めた金融経済圏の強化を進めています。
では、なぜ銀行なのでしょうか…?
最大の理由は、銀行口座が生活から簡単に切り離せないサービスだからです。
クレジットカードやQRコード決済なら比較的簡単に変更できますが、給与振込や家賃、公共料金、カード代金などを設定したメイン口座を変更するには手間がかかります。
一度生活の中心となれば、何年、場合によっては何十年と使い続けてもらえる可能性があります。
つまり通信会社が狙っているのは、単なる口座数ではなく、日常的にお金が出入りするメイン口座なのです。
実際、2026年のMMD研究所の調査でも、通信キャリアと連携するネット銀行4社のメイン利用率は平均35.8%となっています。
通信会社と銀行の結びつきは、すでに利用者の選択にも表れ始めているのです。
金利のある世界で銀行の価値がさらに高まる
銀行は利用者から集めた預金を、住宅ローンや企業向け融資、債券などで運用し収益を得ています。
もちろん預金は銀行の自由なお金ではなく、利用者へ返す義務があるため、通信会社が銀行の預金を好き勝手に使えるわけではありません。
それでも自社グループに銀行があることには大きな意味があります。
例えばカード会社は、利用者が買い物をしてから実際に代金を回収するまでの資金を用意する必要があり、外部から資金を調達すればコストがかかりますが、銀行を含めて金融事業を一体化できれば、グループ全体でより効率的に資金を回せるのです。
さらに重要なのが囲い込みで、銀行、スマホ、カード、決済、証券をまとめ、給与振込を設定すると優遇、カードの引き落とし口座にするとポイントアップ、証券口座と連携するとさらに還元、といった仕組みを作れば、利用者が複数のサービスを使う理由になります。
これからは携帯料金だけ、銀行金利だけを比べる時代から、どの経済圏に生活のお金をまとめるか?を考える時代へ変わっていくのかもしれません。
実際、通信会社と銀行の連携による金利優遇や金融サービスへの関心も高まっています。
一方で、利用者にとってもサービスをまとめることで優遇を受けられるメリットがありますが、還元率だけではなく条件や総コストまで比較することが重要です。
今後の通信会社の競争は、電波をどこから買うかだけでなく、給料をどこに預けお金をどこで使うかをめぐる争いへと変わっていきそうです。
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