都市開発には莫大な資金と計画が必要ですが、時には大胆すぎる夢が現実の厳しさに打ち砕かれることもあります。
今回は、そんな壮大な計画が失敗に終わった3つの都市を紹介します。
ドバイアイランド|ドバイ
壮大すぎる人工島計画の破綻!?
アラブ首長国連邦ドバイの沖合いに作られた人工島群「ドバイアイランド」、このプロジェクトは、世界屈指のリゾート地を目指して、ヤシの木を模した島々を多数建設するという壮大なものでした。
成功から悲劇へ、最初に完成した島「パーム・ジュメイラ」は、高級ホテルや別荘が立ち並び、世界中のセレブから注目を集めました。
しかし、この成功がさらなる無謀な拡張計画を生むことに…。
パーム・ジュメイラの約1.5倍、さらには10倍規模の島々を次々と建設しようとします。
しかし…資金超過や工期の遅れが続出、さらに、2008年のリーマンショックの打撃でドバイの不動産価格が暴落し資金調達が困難になりました。
島々の開発は停止し、今でも多くの島が未完成のまま放置されています。
さらに、唯一完成したパーム・ジュメイラも地盤沈下や海面上昇の影響で、将来的には水没の可能性があるとされているのです。
ドバイアイランドの拡張計画は、パーム・ジュメイラでの成功がさらなる投資を呼び込みましたが、需要の見極めやリスク管理を怠ったことで計画は頓挫。
自然環境の影響を軽視し、無理な埋め立てが長期的な損失を招いたのです。
これらは壮大な夢が現実に直面した際の課題を如実に表す結果となりました。
オルドス市|中国
中国のドバイを目指したゴーストタウン!?
中国内モンゴル自治区の砂漠地帯に位置するオルドス市。
この都市は、石炭バブルに沸いた2000年代に「中国のドバイ」を目指して建設されました。
石炭バブルの盛衰豊富な石炭資源に支えられた開発では、豪華な高層住宅やスタジアム、美術館などが次々と建設され、総額16兆円以上が投じられました。
しかし、完成した住宅の価格が高騰し、中流層には手が届かないものとなってしまいます。
さらに、学校や病院、交通インフラなど生活必需の施設整備が後回しにされ、住民はほとんど集まりませんでした。
過酷な環境と経済崩壊砂漠地帯特有の極端な気候や周辺都市からのアクセスの悪さも人口流入を妨げる要因になってしまいます。
そして2016年頃から石炭価格が暴落し、市の成長は停滞。
不動産バブル崩壊とともに、オルドス市は「バブルの負の遺産」として語られるようになりました。
人口増加への努力と現実のギャップ近年、地方政府は定住促進策として、農家への補償金支給や無料住宅提供を行い、一時的には人口が増加しましたが、環境の厳しさやインフラ不足、地場産業の欠如が課題として残り、抜本的な解決には至っていません。
オルドス市の失敗は、地域の特性を無視した開発計画の危険性を示しています。
ザ・ライン|サウジアラビア
未来都市の夢が現実に打ち砕かれる!?
2021年、政府の全面的な支援によりサウジアラビアで計画開発が始まった「ザ・ライン」。
この都市の計画は、全長170km、幅200mの細長い建物で、150万人を収容する未来都市です。
革新的なコンセプト「道路のない都市」を目指し、高速鉄道やAIによるスマートインフラを駆使した計画は、環境保護や再生可能エネルギーの活用など画期的なものです。
徒歩5分圏内に生活必需品が揃う利便性もアピールポイントにしています。
しかし、この計画には非現実的な要素が実に多すぎました。
例えば、都市内を移動する高速鉄道の速度は、現存するどの技術でも達成不可能なレベル。
また、スマートシティ構想も実用化にはほど遠い状況です。
そんな中、2024年には計画の縮小がリークされ、150万人収容の目標が30万人に、完成予定の範囲もわずか2.4kmに留まると予想されています。
投資額約227兆円という国家規模の予算を投じたにも関わらず、実現には程遠い状況です。
社会的影響と国際的批判さらに、この計画の実行には多くの反対意見も存在し、立ち退きを拒否した住民への強制措置や逮捕が行われたことが報道され、国際社会からの批判も高まりました。
ザ・ラインは未来都市の象徴として注目されましたが、その背後には計画性の欠如と非現実的な目標が影響しています。
まとめ
今回紹介した3つの都市に共通するのは、夢のようなコンセプトが計画性や現実的な視点を欠いていたことです。
どの事例も、計画の段階で現実的な課題を直視していれば、結果は違っていたかもしれません。
都市開発は夢だけでなく、持続可能性と実現可能性を両立させることが重要ですね。
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