え、ゲオ(GEO)って今スウェット売ってるの!?と驚いた方も多いのではないでしょうか。
かつてはDVDやCDレンタルでおなじみだったゲオが、2024年秋冬シーズンに激安スウェットでアパレル市場に旋風を巻き起こしました。
上下セットで、1,098円というペラペラスウェットが、週1万着という異例のペースで売れ続けたのです。
なぜこの商品がここまでの人気を得たのか?その理由は、徹底的に考え抜かれたゲオ独自の戦略がありました。
ゲオ(GEO)が挑んだ事業転換

NetflixやSpotifyの普及により、ゲオの本業だったレンタル事業はこの10年で売上構成比が3分の1に減少、一方で「セカンドストリート」を展開する古着事業や中古スマホ事業は急成長を遂げます。
そして、2022年から新たに加わったのがアパレル分野です。
ゲオは、ライフスタイルを総合的に提案する小売店へと変貌を遂げつつあります。
アパレル事業のコンセプトは、おしゃれよりも実用性を追求、2024年秋に発売された「あったかスウェットセットアップ」は、まさにその象徴でした。
上下セットで1,098円という価格、シンプルな無地デザイン、そして薄手素材、家でくつろぐ時間に特化したコンセプトが共感を呼び、購入者の多くは「DVDを借りたついで」や「SNSで見て気になって」などの偶然の出会いから商品を手に取っていました。
価格だけでなく、ライフスタイルにマッチした「想定用途の明確さ」も、爆売れの大きな要因となったのです。
価格から考える、逆転発想のプロセス
一般的なアパレルメーカーが「素材ありき」で商品を設計するのに対し、ゲオは真逆でした。
最初に「上下で1,098円」と価格を設定し、そこから素材や仕入れルート、物流、人件費すべてを逆算して構築、「工場からの直接仕入れ」、「物流コスト・保管コストの見直し」、「商社や中間業者の排除」、「最小限のパッケージと店頭ディスプレイ」こうして完成したスウェットは、価格を守るために最適化された商品でした。
社内でも「ペラペラすぎるのでは?」と疑問の声が上がったものの、それでも開発担当者は価格へのこだわりを貫いたのです。
また、いきなり全国展開をせず、2022年・2023年にテスト販売を実施し、購入者から「もう少し暖かくしてほしい」といった声を受けて裏起毛素材を採用するなど改良を重ねました。
その結果、2023年には3万着が即完売、今シーズンは30万着を生産し、2月時点で25万着を突破するほどの大ヒット商品となったのです。
販売戦略と消費者のリアルな反応
こんなに薄くて売れるのか?という不安は、実際には大きな強みに変わりました。
- 「軽いから着心地がラク」
- 「乾きやすくて洗濯しやすい」
- 「この価格なら何枚でも買える」
- 「部屋着ならこれで十分。むしろ分厚くない方がいい」
など、薄さゆえの実用性や快適さに多くの支持が集まりました。
また、スウェットが並んでいた売り場は、DVD・マクラ・イヤホンなど「テレビの前で快適に過ごすアイテム」の一部に陳列、商品を見た消費者は「映画を見るときにぴったりかも」と思い自然な「ついで買い」の誘導に成功しました。
これは単に服を売るのではなく、「おうち時間に最適な空間をトータルで提案する」ゲオならではの販売スタイルともいえます。
人気の裏で見えた課題とゲオの次なる可能性
今回のスウェットは、まさに価格と用途を極限まで突き詰めたことで大ヒットとなりました。
しかし一方で、アパレルを展開していること自体が知られていないという認知度の課題も浮き彫りになります。
「ゲオ=レンタル屋」というイメージが強く、アパレル目的で訪れる人はまだ多くありません。
レンタルのついでやSNSで知った層が中心で、アパレル売場としての知名度は今後の課題と言えるでしょう。
ただ、だからこそ可能性も大きく、これだけのヒット商品が既に存在し、なおかつその認知度が低い状態であれば、今後のPRや展開次第でさらに売上が伸びる余地があるということでもあります。
実際に広報担当者も「5年後にゲオが何を売っているのか、自分たちでも分からない」と語るように、ゲオの店舗は今まさに大きな過渡期を迎えています。
まさに、暮らし提案型店舗へと進化しようとしているのです。
まとめ
ゲオが放った激安スウェットは、単なる「格安商品」ではなく、価格設計、ターゲット設定、売場の演出までもが緻密に設計された成功例でした。
2024年秋冬シーズンにヒットしたこの商品は、家での生活密着型ウェアとして、消費者のリアルなニーズを見事に捉えました。
今は春を迎え、スウェットの需要は落ち着いていますが、この成功体験をもとに、ゲオが次に仕掛けるのは一体どんな商品なのでしょうか。
レンタル屋のイメージを脱却しつつあるゲオの次なる一手に、引き続き注目が集まります。
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