エスカレーターといえば直線的な移動がほとんどですが、そんな常識を覆すのが、日本が誇る「らせん状のエスカレーター」です。
このらせん状の「スパイラルエスカレーター」を実現したのは、日本企業の三菱電機です。
しかし、なぜらせん状にする必要があるのか、どうやって実現しているのか、今回は紹介します!
らせん状のスパイラルエスカレーター
らせん状の「スパイラルエスカレーター」とは、通常の直線型エスカレーターとは異なり、回転するように上昇または下降するエスカレーターの事を指します。
この独自の形状により、建築デザインの自由度が高まるだけでなく、狭いスペースで効率よく人を移動させることが可能になるのです。
この画期的なエスカレーターは、1970年代に三菱電機が世界で初めて開発しました。
開発の背景と課題
スパイラルエスカレーターの開発には、多くの技術的な課題がありました。
通常の直線型エスカレーターでは、部品が単純な直線運動を繰り返すため、設計も比較的簡単です。
しかし、らせん状にすると次のような課題が発生します。
曲線部分での均一な動作を実現するために、三菱電機は「中心移動方式」という独自の技術を開発し、この方式により踏み板が移動する中心軸に沿って正確に移動、安定した動作を実現することができました。
さらに、らせん状の移動中でも乗客が安全に利用できるよう、耐久性や振動抑制、滑り止めなどの設計も工夫されています。
この開発により、三菱電機はスパイラルエスカレーターに関連する多くの特許を取得しました。
これにより、他社が同様の製品を開発するのは非常に難しい状況になっています。
- 特許の具体例
特殊なレール構造や、曲線部分でのスムーズな動作を実現するための技術。 - 部品のカスタマイズ
スパイラルエスカレーターのすべての部品は特注で作られており、三菱電機の技術力を象徴しています。
これらの技術が組み合わさることで、他社にはない高い信頼性と性能を持つ製品が完成しました。
世界に設置されたスパイラルエスカレーター
三菱電機のスパイラルエスカレーターは、世界中のランドマークに設置されています。
■国内(一部抜粋)
- ブリリアタワー東京(東京都)
- インテックス大阪(大阪府)
- 中山競馬場(千葉県)
- 米子しんまち天満屋(鳥取県)
- 小倉アイム(福岡県)
■海外(一部抜粋)
- タイムズスクエア(香港)
- ロッテワールド(ソウル)
- 上海新世界大丸(上海)
- THE FORUM SHOPS AT CAESARS(ラスベガス)
- SEMINOLE HARD ROCK HOTEL & CASINO TAMPA(タンパ)
- スターバックス・リザーブ・ロースタリー・シカゴ(シカゴ)
これらの設置例は、スパイラルエスカレーターが単なる移動手段としてだけでなく、建物全体のデザインや価値を高める要素として機能しています。
なぜ、らせん状が選ばれるのか?
スパイラルエスカレーターには、次のような利点があります。
空間の有効活用、狭いスペースでも設置可能で、建物デザインの自由度を高める効果があります。
また、曲線美が目を引き、施設の象徴となるビジュアルインパクトも大きな魅力です。
さらに、スパイラルエスカレーター自体が観光資源としての価値を持つこともあり、話題性を生むことで施設の注目度を向上させる役割を補います。
まとめ
三菱電機のらせん状のスパイラルエスカレーターは、技術革新とデザイン性を兼ね備えた日本が誇るべき製品です。
開発当初は技術的な課題が山積みでしたが、独自の中心移動方式や特許技術によってこれらを克服し、世界中でその価値を認められています。
このような技術があるからこそ、日本のものづくりは世界に誇れるのです。
スパイラルエスカレーターを見る機会があれば、その背景にある技術のすごさを思い出してくださいね。
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