電車が走らない都道府県が存在する！？日本で唯一の県の理由が想像以上だった！

電車のない都道府県があるって本当？と思わず二度見してしまいそうなこの話、実は事実なんです。

四国の徳島県には、全国で唯一「電車が一度も走ったことがない県」として知られています。

なぜ電車が走っていないのか？バスや車はどうなっているのか？今回は、そんな全国唯一の徳島県の交通事情を深掘りしていきます。

なぜ徳島県には電車が走っていないのか？

鉄道はあるのに電車はない…これは「気動車」というディーゼルエンジンで走る列車が中心だからです。

電車とは、架線から電気を供給して走る列車のことで、徳島県を走るすべての列車はディーゼルエンジン搭載の気動車になっています。

つまり、線路に電線（架線）が一切敷かれていない「非電化路線」しか存在しないのです。

その理由は主に3つあります。

① トンネルの構造的な制約

代表的な高徳線をはじめ、徳島県内の路線には小型のトンネルが多く、電線を張るには大規模な掘り直しや天井拡張が必要になり、そのコストが膨大でJR四国の厳しい経営状況では非現実的です。

② 利用者数と需要の少なさ

徳島県は全国的に見ても人口が少なく鉄道の需要も限定的、特に車社会が浸透しているため、日常生活において鉄道が主役になることはほぼありません。

こうした背景が、電化に向けた投資意欲を削ぐ結果につながっています。

③ 電化の波に乗り遅れた歴史的経緯

昭和期に他地域で鉄道電化が進んだ際、徳島では逆にディーゼル気動車による「無煙化」を早期に実現しました。

ある意味で技術的な近代化は果たされていたため、あえて電化を進める必要性が薄かったという歴史的背景もあります。

電車が一度も走ったことがないと聞くと、「本当にそんな話があったの？」と思う方もいるかもしれませんが、実は徳島にも電車構想は存在しました。

阿南電気鉄道は1911年に徳島～阿南間を電気鉄道として開業する計画を立てていましたが、国から「既存免許との重複を避けること」「電気ではなく蒸気鉄道にせよ」と指導が入り計画は頓挫、最終的には国有化され、蒸気・のちにディーゼル化されました。

また阿波電気軌道も1908年に電気鉄道として開業予定でしたが、予定していた電力会社の発電能力不足が判明、発電所の新設も予算的に困難だったため、こちらも蒸気運行→国有化の流れとなり、以降一度も電化されることはありませんでした。

このように、電車を導入しようとした動きは確かにあったものの、当時の制度・コスト・設備の問題からことごとく潰えたという歴史があります。

では、電車がない徳島で人々はどう移動しているのでしょうか？

JR四国の気動車路線
現在、徳島県には高徳線・徳島線・牟岐線・鳴門線・阿佐海岸鉄道の5路線が存在しますが、いずれも気動車での運行。観光特急「うずしお」「剣山」や、景観が楽しめる「藍よしのがわトロッコ」など、ディーゼルながら旅情あふれる列車も多く、乗り鉄にはたまらない魅力があります。
DMV（デュアルモードビークル）という先進技術
阿佐海岸鉄道では、世界初の「DMV」を導入。これは鉄道と道路の両方を走れる車両で、気動車とバスのハイブリッドのような存在。今や徳島の新名物です。
高速バス・自家用車中心の社会構造
移動手段の主力は車とバス。徳島県民の多くは自家用車を所有し、鉄道に依存するライフスタイルではありません。都市間の高速バスも充実しており、大阪・神戸など関西方面への移動も高速バスが主力です。
空路と航路の活用
徳島阿波おどり空港からは羽田・福岡・札幌・沖縄などへの定期便があり、全国とのアクセスを補っています。また、南海フェリーで和歌山とも接続しており、鉄道に頼らない移動が確立されています。

徳島の人に「電車が来た」と言うと「汽車でしょ」と訂正される、そんなやりとりは県民あるあるです。

なぜなら、徳島では線路の上を走る乗り物は「汽車＝ディーゼル車」が当たり前、しかもそれが県民共通の認識になっており、汽車文化が深く根付いているのです。

電線のないスッキリとした車窓、開放感のある風景、気動車の独特なエンジン音、これらは電化されていないからこそ楽しめる体験であり、徳島の鉄道の魅力でもあります。