2016年1月の毎日新聞の記事です。男の育児について書かれています。育児に参加したいのか?そうではないのか?会社でも家庭でも「使えねー」と言われないようにする為に残業に励むのでしょうか?!
働く子持ち女性、いわゆる「ワーキングマザー(ワーママ)」なんて言葉もありますね。
子供がいるご家庭では、どうしても働くママが孤軍奮闘する傾向が見られます。
さてなぜなのでしょうか?
この記事に少しだけヒントがあるような気がします。ご参考までにお読みください。
長時間労働は一つの大きな理由
Aさん(30代男性)は不動産会社で働いています。妻はパートタイム勤務で、子供は4歳。Aさんは毎日残業をしていて、帰宅時間はだいたい夜10時ごろです。そのため、平日は育児・家事はまったくしません。ときどき妻とけんかになりますが、妻は仕方がないとあきらめ気味です。関西大学の大和礼子教授らの研究によると、父親が育児・家事をする/しない理由は三つに大別できるそうです。まず、父親と母親が置かれている「状況」に左右されます。労働時間が長いことは一つの状況であり、そのほかに「母親の勤務時間が短い」「育児を手伝ってくれる祖父母が近くにいる」などの状況も、父親の育児・家事へのかかわりを減らす要因になります。
次に、父親と母親のそれぞれの「収入」が、育児・家事負担の割合を左右することがわかっています。
母親の「稼ぎ」が父親の育児を左右する
Bさん(30代男性)のケースを見てみましょう。Bさんは出版社に勤めていて、妻はフルタイム勤務の専門職、子供は3歳。BさんもAさんと同じぐらい残業をしていますが、遅い帰宅の後に皿洗いや洗濯をし、朝は子供を保育園に送っていきます。毎日ヘトヘトだそうです。実は、Bさんと妻の収入はほぼ同じです。通常、父親と母親で収入や学歴の高い方が、育児・家事に関わる交渉で強い立場をとれます。多くの場合、父親の収入の方が高いので、母親の育児・家事の負担が増えます。ところが、Bさんのケースのように、母親に十分な稼ぎがあると、父親の家事分担が増えやすいのです。
父親が主たる稼ぎ手なら、父親より収入が少ない母親は育児・家事を主に担当しますが、収入が同レベルなら、父親の分担割合も増えやすい、ということです。では、父親の稼ぎが母親より少ない場合はどうでしょうか。「稼ぐ」ことが男らしさの一つの要素なので、事態は少し複雑です。「主夫」の役割を受け入れる男性も少しずつ増えていますが、一方で、「稼ぎ」の少ない父親が、「一家の主」の地位とプライドを保とうとして、あえて育児も家事もしないケースもみられます。母親も、夫婦の関係性を壊さないようにと、稼ぎながら子どもと夫の世話をすべてこなします。
「男が稼ぐ」という意識が少子化を進行させる?
そして、最後に「意識」です。「男が外で稼ぎ、女は育児・家事を担う」という性別役割分業意識が強いと、父親は育児・家事にあまり参加しなくなるという説があります。いまの子育て世代に聞くと、多くの男性が「父親も育児に参加すべきだ」と考えています。なのになぜ多くの父親は育児をしないのでしょうか。
日本大学の小笠原祐子教授は研究で、「男性が育児をする」「女性が稼ぐ」という新しい役割を受け入れることと、「男性が稼ぐ」「女性が育児をする」という伝統的な役割を果たそうとすることは、別の次元にあると指摘しています。
平日に育児・家事をしないAさんも、「男は外で仕事、女は育児」と強く考えているわけではありません。同世代の多くの男女と同じように、男性の育児や女性の活躍に賛成しています。
しかし同時に、「男は出世することが重要だ」という規範も強く内面化しています。出世レースから脱落しないよう、自ら進んで長時間働いているのです。その結果、すべての育児と家事は妻に偏ります。このような家庭は多いのではないでしょうか。
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引き裂かれる「スーパーお父さん」
働き方が多様化し、ごく一部ではありますが、育休を取得したり、家族のために転職したり、出世につながる転勤を断ったりする父親も現れています。つまり、父親本人の意思で、長時間労働などの「状況」を変えることも可能になっています。それにもかかわらず、大半の父親が仕事中心の生活を送るのは、「男なら稼ぐべきだ」「男なら出世すべきだ」という規範が強く、仕事を減らさないからだというのです。アメリカでは仕事も育児も完璧にこなす母親を「スーパーお母さん(supermom)」というそうですが、仕事も子供の「世話」もバリバリこなすBさんは、いわば「スーパーお父さん」といったところです。
Bさんは現在の生活が心身ともにとてもきついので、近いうちに、会社と交渉して仕事をセーブしようと考えています。しかし同期の出世を見ると「第一線でバリバリ仕事をこなしたい」と思ってしまいます。子育てに関わりたい気持ちと、会社組織の中で負けたくない、「使えない」と言われたくないという気持ちの間に、強い葛藤があるのです。
日本の企業の多くは中核的な社員を無限定に働かせ、競わせる人事制度を取っています。この制度と、男らしさ=出世という規範が強固に組み合わさっていると、男性は早く家に帰れず、帰らず、育児・家事に関わることは難しいでしょう。すると、育児・家事負担は女性に重くのしかかります。今の働き方と、それを支える価値観のままでは、子供を産んで育てることが難しい状況が続くのです。