かつて、A5ランクと聞けば最高級の和牛というイメージがありましたが、ところが現在は、A5ランクが市場の7割以上を占めるまでに増えています。
なぜ最高ランクの和牛が、ここまで当たり前になったのでしょうか…。
A5ランクは15年前の約2割から7割超へ

日本食肉格付協会のデータでは、15年前には約2割だったA5等級の割合が、現在では7割以上にまで増えています。
和牛去勢牛のA5割合は2000年の13%から2025年には71%まで上昇しており、かつての希少性は大きく変化しています。
その背景にあるのが、血統改良と肥育技術の進歩です。
霜降りが入りやすい牛の血統が選ばれ、飼料やビタミンAの量を細かく調整する技術も確立、さらに牛ごとの血統、食事、病歴などをデータ化し、どのように育てれば高い格付けを得やすいのかまで管理できるようになっています。
ある牧場では、「今の血統ならエサをマニュアル通りにやると100%A5が出る」と語られるほどです。
こうしてA5は、偶然生まれる特別な牛ではなく、技術によって狙って生産できるものへと変わりました。
さらに興味深いのが、A5が増えすぎたことで、A3やA4のほうが仕入れにくくなり、価格差まで縮まりつつあることです。
場合によっては、仲卸業者が品質を評価した結果、A4がA5より高値で競り落とされることもあります。
かつて最高級の証だったA5は、今や業界関係者からは、特別感はない・当たり前と言われるほど身近な存在になっているのです。
A5なら必ず一番おいしいわけではない
そもそもA5という格付けは、食べたときのおいしさを採点したものではありません。
「A」は歩留等級と呼ばれ、枝肉からどれだけ多く商品になる肉が取れるかを評価したものです。
一方の「5」は肉質等級で、脂肪交雑、肉の色沢、締まりやきめ、脂肪の色沢と質などを総合的に評価します。
つまり、A5は一定の基準で高く評価された肉ではありますが、誰が食べても最もおいしい肉という意味ではないのです。
さらに近年では、霜降りだけではなく、赤身の旨味や香り、脂の軽さ、食後の印象などを評価しようという動きも出ています。
出産を経験した経産牛を再肥育し、サシの量ではなく赤身の旨味を生かす取り組みなどはその代表例です。
A5が当たり前になったことで、和牛業界はA5を作る競争から、A5の中でどれだけおいしい肉を作れるか、さらにA5とは違うおいしさをどう評価するかという次の段階へ進み始めています。
これから和牛を選ぶ際は、A5という表示だけではなく、脂の質や霜降りの入り方、生産者や赤身の旨味などにも注目する必要がありそうですね。
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