近年、1日3時間の睡眠でも健康を保つショートスリーパーの存在が知られるようになってきましたが、実はその概念すら超える「全く眠らない人間」が実在するとしたら信じられるでしょうか?
しかもその状態で何十年も生活し続け、病気ひとつせずに暮らしているとしたら、もはや人間の限界を超えた存在と言っても過言ではありません。
今回は、世界でも特に有名な「眠らない人間」として語り継がれる2人について、医学と常識を揺るがすエピソードと共に紹介します。
未だ解明されてない眠らない人間2人の謎

タイ・ゴック氏
ベトナム中部の農村で暮らすタイ・ゴック氏が「眠らない体になった」と語り始めたのは、20歳のときのことです。
原因不明の高熱で一時的に意識不明となり、その後回復したものの、以後はまったく眠気を感じなくなったといいます。
それから60年以上、夜になってもまったく眠ることなく生活を続けてきたと本人は証言しており、その主張にメディアや医療関係者も注目しました。
医師による診察では健康に異常は見つからず、睡眠薬を使用してもまったく効果はなかったとのこと…。
タイ・ゴック氏は昼間は農作業に従事し、夜は緑茶や米酒を飲みながら静かに過ごす日々を送っています。
実際にタイやイギリス、オーストラリアなどのテレビ局が密着取材を行い、彼が数日間にわたって本当に一度も眠らない姿を確認したと報道しています。
こうした報道は国内外に大きな衝撃を与えました。
一方で、彼が海外で精密な検査を受けることはありませんでした。
その理由について彼は「妻をひとり残して遠くに行きたくない」と語り、あくまでも自分の暮らしを優先していたからです。
2011年以降、本人は米酒を飲めば30分ほどのうたた寝ができるようになったと述べており、完全な不眠ではない可能性も指摘されているものの、数十年に及ぶ「意識的な睡眠ゼロ」の生活が事実であるとすれば、やはり驚異的と言わざるを得ません。
アル・ハーピン氏
タイ・ゴック氏よりもさらに時代を遡った19世紀末、アメリカ・ニュージャージー州トレントンに「Man Who Never Slept(眠らない人)」として話題を呼んだ人物がいました。
その名は、アル・ハーピン氏です。
彼は「生まれてから一度も眠ったことがない」と主張し、夜も椅子に座ったまま新聞を読んで静かに過ごしていたと語られています。
彼のまぶたが閉じられるのは、瞬きのときだけだったそうです。
ハーピン氏の不眠生活に関して当時の『ニューヨーク・タイムズ』や地元紙などに複数回取り上げられており、その存在は確かなものとされています。
1890年代には新聞王ジョセフ・ピューリツァーの意向により、ヨーロッパから医師団がトレントンに派遣され、1週間にわたって24時間体制でハーピン氏を観察しました。
しかし、その間一度も彼が眠る様子を確認することはできなかったと記録されています。
医師たちは睡眠薬や注射といったあらゆる方法を試みましたが、いずれも効果はなく理由も不明のままです。
驚くべきは、彼が体調を崩すこともなく、馬丁として日々働き、普通の生活を送っていたという点です。
ハーピン氏は若い頃から、サーカスやフリークショーなどに出演するよう求められたこともあったそうですが、「母との約束がある」としてすべて断っており、自らの異常性を売名に利用することなく、一貫して静かな暮らしを守り抜きました。
1947年、94歳で亡くなった際にも、医師は「彼の死は不眠とは無関係」と診断しました。
つまり、彼は「完全に眠らずに」健康を維持し、人生をまっとうしたことになります。
現代でもこれほどの長寿と完全不眠が両立した例は報告されておらず、アル・ハーピン氏は伝説的な存在となっています。
医学では説明できない不眠の謎
この2人の共通点は、「眠っていないと本人が強く確信しており、かつ健康状態を維持している」という点にあります。
現代医学では、完全な不眠は生存できないとされています。
そこで注目されるのが「睡眠状態誤認症(実際には眠っているが、自覚がない)」「マイクロスリープ(無意識に数秒~数十秒眠ってしまう)」「局所睡眠(脳の一部だけが休息する)」といった理論です。
実際に本人が「眠っていない」と感じていても、科学的には短時間でも睡眠が取られている可能性もあるのです。
しかしながら、これまでに記録された観察記録や長年の生活スタイルを考慮すると、単なる誤認とは思えない部分もあり、いまだに完全には解明されていないのが現実です。
まとめ
眠らなければ人間は死ぬ、という常識を覆すかのように生きたタイ・ゴック氏とアル・ハーピン氏の存在は、現代科学にとっても大きな謎です。
彼らが本当に「完全な不眠」であったのかは明確には証明されていないものの、健康を維持しながら不眠状態を何十年も続けたという事実は否定できません。
こうした実例は、人間の生理にまだ未知の側面が存在することを示唆しています。
彼らの人生は、常識の外にも人間の可能性が広がっていることを教えてくれるのです。
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