永久凍土ってただの冷たい土じゃない?と思っていませんか?
実はそこから発掘されたモノたちは、私たちの常識を覆すものばかり。
サーベルタイガーの子ども、数万年前のパンデミックウイルス、そして100年前の戦争の隠れ家、これらがほぼそのままの姿で見つかっているとしたら…?
永久凍土とは何か?

簡単に説明すると、永久凍土とは「2年以上連続で0℃以下を保っている地面や土壌」のことです。
主にシベリアやアラスカ、カナダ北部などの寒冷地に広がっており、厚さは数十メートルから数百メートルに達することもあります。
そしてこの中には、時間が凍結されたように保存された動物や人間の痕跡、そしてウイルスまでもが眠っているのです。
近年の温暖化でそれらが次々と地表に現れ、「まさかこんなものが…」という発見が相次いでいます。
約2万8000年前のサーベルタイガーの子ども
2020年、ロシア・シベリアの永久凍土から発見されたのが、サーベルタイガーの赤ちゃん(ホモテリウム属)。
この個体は推定生後1〜2か月、なんと毛皮やヒゲ、皮膚、筋肉、内臓まですべてが保存された「奇跡の標本」として話題になりました。
このような保存状態が可能だったのは、永久凍土の中が冷たく乾燥していて、微生物の分解活動がほとんど行われないからです。
氷河期の動物たちが、まるで昨日まで生きていたかのように見つかるのはそのためです。
科学者たちはこのサーベルタイガーのDNA解析を進めており、今後はより詳しい生態や進化のルーツが解明される可能性もあります。
中には「マンモスに続き、復活させることも視野に入れている」という声すらあり、未来の科学との接点としても注目されています。
永久凍土から復活した古代ウイルス
2014年、そして2022年にフランスの研究チームが報告したのが、3万〜5万年前の古代ウイルスが永久凍土から復活したというニュースです。
彼らは「ピソウイルス」や「ゾンビウイルス」と呼ばれる巨大ウイルスを復活させることに成功しました。
これらのウイルスはアメーバにしか感染しないものではありますが、最大の問題は「人間や動物にも感染する未知のウイルスが今後見つかるかもしれない」という点です。
実際に、2016年にはシベリアで溶けた永久凍土から炭疽菌(あんそ菌)が出土し、人間に感染、死者も出る事態が起こりました。
これは氷の中に閉じ込められた感染源が、気候変動で再び活動を始めた恐るべきケースです。
つまり、永久凍土には「現代医学では対応できない未知の脅威」が眠っている可能性もあるのです。
第一次世界大戦の兵士の隠れ家
もうひとつの驚きは、人間の痕跡がそのまま保存されていたケースです。
特に有名なのが、第一次世界大戦中の「白い戦争(White War)」で知られる、アルプス山脈での山岳戦です。
イタリア軍とオーストリア軍が標高3000メートルを超える地帯で戦ったこの戦争では、極寒の環境により多くの兵士が自然に命を奪われました。
近年、氷河が溶けたことにより、当時の兵士の遺体・隠れ家・食器・日記・衣服などがほぼ完全な状態で発見される事例が続出しています。
例えば、2012年にはイタリア北部のプレッサナ氷河からミイラ化した兵士2人の遺体が発見され、当時の装備や名札もそのままの状態で残っていました。
また、氷の中に作られた即席の兵舎も見つかっており、そこにはベッド、火鉢、缶詰、スプーン、紙類などもそのまま…まさに「100年前の時間が凍ったまま」だったのです。
彼らは、補給も途絶えた状態で、氷を溶かして水を作り、凍った缶詰を体温で溶かして生き延びようとしたこともわかっています。
戦争の悲惨さと自然環境の過酷さが重なった、強烈な人間ドラマがそこにはあります。
まとめ
永久凍土、そこには数万年前の生物がまるで生きているかのように残されていたり、パンデミックの危険性すら秘めたウイルスが眠っていたり、人間の歴史の痛みが凍り付けられていたりします。
そして今、その冷凍庫が地球温暖化により少しずつ溶けはじめています。
私たちがこれから向き合わなければならないのは、過去からの贈り物なのか、それとも警鐘なのか。
永久凍土の下にはまだ、誰も見たことのない何かが確実に眠っているかもしれません…。
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