観光客が増えれば増えるほど儲かる…そんなイメージを持っていませんか?
しかし今、日本を代表する観光地・宮島では、年間500万人が訪れる一方で、島はむしろ苦しくなっているという現実があるのです。
宮島、観光客が多すぎて苦しい…矛盾した現実
広島県廿日市市にある宮島は、世界遺産・厳島神社を擁する日本屈指の観光地です。
1996年の世界遺産登録以降、国内外からの観光客は急増し、現在では年間約500万人が訪れるまでになりました。
しかし、その華やかな数字の裏で、島は深刻な問題を抱えています。
宮島の住民は約1500人に過ぎず、単純計算で観光客はその約3000倍、これほどの人流を支えるには、当然ながらインフラへの負担が大きくなります。
観光客が出すゴミや排水は島内で処理しきれず、本土へ運搬する必要がありそのコストは膨大、さらにトイレ整備や混雑対策、文化財の維持など、行政サービスにかかる費用も増え続けています。
また、多くの観光客は宮島に宿泊せず、広島市内に滞在するケースが多いため、島内での消費は限定的、つまり「人は来るが、お金は落ちない」という構造ができあがっているのです。
その結果、観光客が増えているにもかかわらず、自治体の財政はむしろ圧迫されるという矛盾が生まれています。
訪問税は解決策になるのか?
こうした状況を受け、宮島では2023年に「訪問税」が導入されました。
観光客1人あたり100円を徴収し、トイレ整備やゴミ対策、混雑緩和などに充てる仕組みで、この取り組みによって年間約4億円の財源が確保され、スマートゴミ箱の導入や景観整備など、一定の成果も見られています。
さらに注目すべきは、訪問税を導入しても観光客数が減っていない点で、アンケートでは200円〜300円程度の負担増でも受け入れるという声が多く、訪問税は観光客抑制ではなく財源確保として機能していることが分かります。
この成功事例は沖縄・竹富島など他地域にも波及し、日本全国で同様の取り組みが検討されるきっかけとなりました。
しかし、宮島の観光関連コストは年間約8億円に対し、訪問税収は約4億円、つまり半分しか賄えておらず、不足分は地元住民の税金で補填されています。
この背景には、日本の観光政策の構造的な問題があり、観光は国策として推進され、訪日客の増加による恩恵は国全体に広がる一方で、現場の負担は自治体に集中しているのです。
現場の首長からは「国がもっと財政支援をすべきだ」という声も上がっており、訪問税だけでは限界があることが明らかになっています。
まとめ
宮島の事例が示しているのは、観光客が多ければ成功という時代が終わりつつあるという現実です。
訪問税は確かに有効な対策の一つですが、それだけでは持続可能な観光地を維持することはできません。
今後は、観光による利益と負担のバランスをどう取るか、そして国と自治体の役割をどう再設計するかが問われています。
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