街中で見かけるカラスは、鳥の中で最も頭が良いと言われることがあります。
近年は脳科学や行動学の研究が進み、その驚異的な知能の理由も少しずつ明らかになってきました。
今回は、カラスがなぜこれほど賢いのか、その秘密を最新の研究も交えながら紹介します。
考えて行動するカラスの驚くべき能力
カラスの知能が世界中で注目されるきっかけとなったのは、1990年代後半に発表された研究でした。
ニューカレドニアガラスが、木の枝を加工して虫を取り出す道具として使う姿が確認されたり、針金を曲げてフックを作り筒の中の餌を取り出す実験にも成功しています。
さらに、日本ではクルミを車道へ落とし、自動車に殻を割らせてから信号が青になるのを待ち、安全に道路へ降りて食べる行動も観察されました。
カラスの知能の高さは記憶力にも表れており、餌を何十~百か所以上に隠し、その場所を正確に覚えているだけでなく、保存期間の短い餌から先に回収することもあります。
また、人間の顔を個別に識別し、自分に危害を加えた人物や餌をくれる人物を何年も記憶できることも実験で確かめられています。
危険人物の情報を仲間に伝える能力まで持つことから、学習する社会を形成している動物としても注目されているのです。
カラスが小さな脳でも高い知能を持つ理由とは
以前は、鳥には人間のような新皮質がないため、知能は哺乳類に及ばないと考えられていましたが、近年の研究では鳥類の脳にある「パリウム」という部位が、人間やサルの新皮質とよく似た働きを持つことが分かってきました。
さらに、カラスのパリウムには非常に高密度の神経細胞が集まっており、ハトやニワトリはもちろん、一部の霊長類に匹敵する情報処理能力を持つとされています。
脳そのものは人間よりはるかに小さいものの、限られた空間に効率よく神経細胞が配置されているため、高い認知能力を発揮できるのです。
カラスは、若い頃は群れで生活し、仲間との協力や順位関係、敵味方の識別を学びます。
過去に助けてもらった相手を覚えたり、仲間との関係を長期間維持したりする能力も確認されており、こうした高度なコミュニケーションが脳の発達を後押ししたという「社会的知能仮説」が有力視されています。
カラスは他の多くの鳥よりも親と過ごす期間が長く、その間に餌の探し方や道具の使い方、生き抜くための知識を学びます。
この長い学習期間も、人間やイルカなど知能の高い動物に共通する特徴の一つです。
普段は身近な存在だからこそ見過ごしがちですが、私たちの頭上を飛ぶカラスは、数億年の進化が生み出した高度な知性を持つ生き物なんですね。
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