以前は「小さく産んで大きく育てる」と言われていた時期もありましたが、妊婦さんの栄養のとり方や出産時の赤ちゃんの体重によって、健康に大きな影響が出てくる可能性が指摘されています。出生時の体重が少ないと、将来の健康リスクや学力に影響するという新聞記事についてご紹介します。
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『小さくなる赤ちゃん』朝日新聞2017年3月28日朝刊
以前は産むときの大変さを考えて、なるべく妊娠中は体重を増やさないという考え方で体重指導がされていましたが、妊婦さんの栄養の状態はお腹の中の赤ちゃんの健康や体重に影響を及ぼし、長い人生に渡って健康に大きく影響することが指摘されています。
生活習慣病の原因が、胎児の頃に発生するという説
30年ほど前『バーカー説』という学説がありました。『出生体重が小さいと心筋梗塞リスクが高くなる』というものです。 その後、多くの研究で分かったことは、胎内の栄養状態に影響されて低体重で生まれた赤ちゃんは、成長したときに肥満でなくても、生活習慣病になりやすいというものでした。 さらに、その後の『ドーハーッド説』という学説では、 胎児の頃から乳幼児期までのいろいろな生活環境によって、成長後の健康だけでなく様々な病気の発症リスクに影響を及ぼすと指摘されています。
学力との関連も?同記事・大阪大学大学院准教授・小原美紀さん
生まれた時の体重が、学力にも影響するかもしれないとのことです。そしてもし、赤ちゃんが生まれた時に小さかった場合、乳児期の体重の増え方に注意が必要になります。 下記のドーハッド説の事例から考えられる点ですが、生まれてから数年の間に急なカロリー摂取や体重が増えることで健康に大きな影響が出てくることになります。 日本ではどのくらいの赤ちゃんが『低体重』なのでしょう。 出生体重が2,500グラム未満が『低出生体重児』と呼ばれていますが、その割合が増えてきていて、2013年には約10%も。先進国の中で、日本は最も高い割合のようです。
学力との関係を見ると、出生体重が軽いほどテストの点数が低いという正の相関がありました。
日本の妊婦さんの特徴
以前の厳しい体重管理の頃から移り変わって、最近ではそういうことも少なくなっているはずですが、低体重の赤ちゃんが増えているのはなぜなのでしょう。ここに日本の妊婦さんの特徴があるようです。 BMIによって、妊娠中に体重がどのくらい増えても良いかという点は、人それぞれ異なりますが、日本の妊婦さんは、妊娠前も、妊娠中も摂取カロリーを”自主的にあまり変えない”という特徴があるようなのです。 また、妊娠中に強いストレスにさらされることで赤ちゃんの出生体重が下がってしまうという報告もあるようです。
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影響が出生後、一生続く?
欧米の事例だけでなく、日本の研究でも、赤ちゃんが小さく生まれると大人になって2型糖尿病になりやすいという結果が出てきています。 また、低体重で生まれた女性は妊娠糖尿病になりやすいという結果も出ているようです。
母体が低栄養状態だと、胎児に大きな変化が起こり、その一部は一生続きます。これが病気になりやすい体質を作ると考えられます。しかも、変化は3世代にわたって続くと言われます。若い女性の栄養は特に重要です。
胎児のときの影響が3世代にわたって続く、というのは本当に驚きですね。 妊娠前や妊娠中にバランスの良い食生活や運動、周囲の人も協力して環境を整えてあげることは、ママはもちろん、赤ちゃんの一生の健康に、大いに役立つようです。