食品や電気代、ガソリン代など、あらゆるものの値上げが続く中、燃料を大量に使う銭湯も当然、大きな影響を受けています。
しかし、銭湯には一般的な飲食店や小売店とは決定的に違う事情があり、燃料費がどれだけ上がっても、経営者の判断だけでは入浴料金を値上げできないのです。
なぜ令和の現在まで、銭湯には戦後から続く特殊なルールが残っているのでしょうか…。
燃料費が上がっても値上げができない銭湯

ある老舗銭湯では、重油価格が1リットル70円前後から100円程度へ上昇、普通の商売なら仕入れ価格が上がれば商品の値上げで対応することができますが、昔ながらの町の銭湯はそうはいきません。
町の銭湯は法律上「一般公衆浴場」と位置付けられ、1946年に制定された物価統制令に基づいて入浴料金が統制されています。
戦後の深刻な物資不足とインフレを抑えるため、当時は米や酒など約1万品目が価格統制の対象となっていましたが、時が進むにつれて次々と解除されていく中、銭湯の入浴料金だけは現在も都道府県に決定権があります。
その為、スーパー銭湯や一部のサウナなど、その他の公衆浴場は施設側で料金を設定できますが、一般公衆浴場は決められた上限を超えて料金を取ることができません。
つまり、原油価格が突然4割上昇しても、来月から100円値上げします!という判断ができないのです。
銭湯が安すぎて消える場所に
戦後は自宅に風呂がない家庭も珍しくなく、銭湯は娯楽施設ではなく生活に欠かせない存在でした。
入浴料金が自由化され、料金が高騰すれば、お風呂に入れない人が出てしまうため、公衆衛生を守る意味でも、誰もが利用できる料金を維持する必要がありました。
時代は変わり、自宅に風呂があることが当たり前になると同時に銭湯も急減していきます。
全国ではピークだった1968年ごろに約1万8000軒あったものが、現在では10分の1以下にまで減少、さらに深刻なのが設備の老朽化で、ボイラーや配管などには多額の修繕費が必要となるため、ボイラーが壊れたら廃業という経営者も多くいます。
かつては、高くなると庶民が困るという理由で守られてきた銭湯、しかし令和では逆に、安い料金を維持できず銭湯そのものが消えてしまうという問題に直面しているのです。
まとめ
戦後の公衆衛生を守るために作られた銭湯の価格統制は、80年近く経った現在も残っており、燃料費や人件費が急激に上昇する時代に、価格転嫁まで時間がかかる仕組みは経営者にとって大きな負担です。
昔ながらの銭湯を残していくためにも、安さを守る制度から銭湯そのものを守れる制度へ、時代に合わせたあり方が問われているのではないでしょうか。
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